モンテカルロ囲碁と5五将棋の講演会

旧記事にて紹介いたしました、エンターテイメントと認知科学研究ステーション第5回講演会旧記事からリンク先が変わっています)には、公開・無料・事前申込不要だったこともあり、専門的な内容にもかかわらず数十人の聴講者が訪れました。コンピュータ将棋開発者も多く集まり、名古屋から遠征されたGA将!!!さんの詳細なメモをはじめ、ym将棋さん、A級リーグ指し手1号さん、WILDCATさん、みさきさん、棋理さんが、当日の模様をブログに書かれています。

追記(6/21): みさきさん、棋理さんを追加しました。

3件の講演のいずれも、第5回講演会のページから各発表資料にたどれますので、当日来られなかった方もご覧ください。内容について詳細に示されています。プログラムの通り前2件は将棋でなく囲碁がテーマでしたが、コンピュータ将棋開発者の皆さんの多くは最初から聴講されていました。山下さんがコンピュータ将棋の雄であることもありそうですが、やはりモンテカルロ木探索のインパクトはコンピュータ将棋界にとっても強烈なのでしょう。美添さんが「プログラミングの労力が少ない」、山下さんが「4ヶ月でGnuGoを遥かに追い越した!」と述べられているように、比較的短期間で開発できそうなところが「コンピュータ将棋の合間にコンピュータ囲碁もやってみようか」と思わせるのかもしれません。今週末に開催される2008年CGF特別例会、すなわちコンピュータ囲碁大会にも、コンピュータ将棋開発者としておなじみの方々が4人おられますね(当ブログ主も週末に見学に行く予定です)。あるいは、この技術をコンピュータ将棋にも使えないか、という考えからかも。

美添さんの発表資料からは、モンテカルロ木探索がかなり囲碁に向いた方法であることがうかがえます。しかしながら、この探索手法の他のゲームへの応用も多くの研究者の関心を集めているようで、今後が楽しみな分野です。

柿木さんの講演は5五将棋。9x九の将棋もプロに迫るくらい強いのだから、それよりも探索空間がはるかに狭い5五将棋ではもはや神の領域? と思いきや、それほど単純ではないようです。5五将棋は探索空間が狭い代わりにプロの棋譜がないので、コンピュータが多数の対局を自演して自ら学習することによって強くなった、という内容。もはやおなじみのBonanza学習法によって、かつてのチェッカー・バックギャモン・オセロと同様に自ら成長できることを示しました。第1回UEC杯5五将棋大会COM部門での棋譜にて、他を圧倒する強さを実証しています(バグのせいで優勝はなりませんでしたが)。序盤の陣形もほぼ定型化されているようで、かなりゲームの結論に近づいている印象を受けます。いずれ、9x九の将棋にもこの成果が生かされることが期待されます。

情報処理学会会誌最新号に、美添さんによる今回の講演同趣旨の解説論文が掲載されています。同号には、エンターテイメントと認知科学研究ステーション伊藤代表による第1回UEC杯コンピュータ囲碁大会報告も掲載されています。第18回世界コンピュータ将棋選手権のこちらへのレポートは、もう少し先になるでしょう。

1 Comment »

  1. 上記にて紹介した、2008年CGF特別例会のページが更新され、結果と棋譜のアーカイブが見られます。山下さんの「」が2種目完全優勝でモンテカルロ囲碁の強さを証明しました。山下さんのブログ更新されています
    コンピュータ将棋や囲碁の掲示板でも紹介されているように、今回の模様が、7月5日に「囲碁・将棋ジャーナル」(NHK衛星第2放送)にて放映される予定です。ちょっと衝撃的な出来事もありましたので、放送をお楽しみに。

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