エンターテイメントと認知科学研究ステーションの第3回シンポジウムが、3/21(土)、22(日)の2日間に行われます。学術的な色彩の強いシンポジウムですが、週末の開催のうえ、多彩な発表・講演・懇親が行われ、かつ事前申し込み不要、参加費も無料で、多くの人々が楽しめるものになるのではないでしょうか。コンピュータ将棋の分野では、激指、Bonanza、AI将棋(YSS)、新東大将棋(棚瀬将棋)による合議制将棋の対局セッションがあります。
昨日行われた当協会3月例会での研究発表によれば、コンピュータ将棋の合議システムとは、各局面での指し手を複数のコンピュータ将棋の多数決で決めるものです。各コンピュータ将棋が挙げた指し手のうち単独最多数の手がなければ、リーダーの指し手が選ばれます。この合議システムと、第64回学生名人戦準優勝者の谷崎生磨さん(東京大学2年)がシンポジウムにて公開対局します。
合議将棋と聞いて、コンピュータ同士のチームワークが本当にうまくいくの? と当ブログ主も思っていましたが、昨日の研究発表では確かな効果があることが示されています。もともとコンピュータチェスでも成果が出ていた研究のようです。コンピュータのCPUコア数が増えていくこれからの時代は、並列探索によって強くなることがますます難しくなる(並列度が上がるにつれてアルファベータ探索の効率が落ちることは原理上避けられない)ので、コアを有効活用するアルゴリズムとしても合議は将来有望かも、など、盛会だった昨日の例会でも議論が盛り上がりました。その強さを実際に目で確かめる絶好の機会でもあります。
エンターテイメントと認知科学研究ステーション 第3回シンポジウムは、IGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)のブログでも紹介されています。その名の通りエンターテイメントなトピックも多いので、多分野からの参加があるのではないでしょうか。それがまた楽しみです。
(追記)棋譜がこちらで公開されています(当初の予定から変更されました)。中継がないかのようなコメントを書いてしまいましたがこれは誤りで、上記のサイトでJavaを有効にすれば見られます。合議側の指し手のコメントで、4つのソフトが挙げた候補手が見られます。どのソフトがどんな棋風か、分析してみると面白いかもしれません。
なおコンピュータの形勢判断は楽観的になる傾向がありますが、なかでも新東大将棋が一番強気で、終盤に負けがはっきりする局面になるまで優勢とみていたそうです。逆に激指が有利と判断した局面はなかったとか。