Archive for 8月 19, 2010

「情報処理」 Vol.51 No.8 「コンピュータ将棋の不遜な挑戦」

追記: こちらのサイトで「情報処理」Vol.51 No.8の電子書籍版を購入できます。記事すべてをお読みになりたい方は、記事ごとのばら売りを購入するよりも安価です。

追記2(8/21): コメント欄でのご指摘、および情報処理学会からもご指摘があり、電子書籍版の「情報処理」は期限が切れると読めなくなるようなことはないそうですので、ご購入後のご心配は無用です。電子書籍版を利用されない方には、図書購入申込サイトが用意されており、「その他(購入数・在庫状況等)」欄に『「情報処理」Vol.51 No.8を1冊』という要領で指定することによって注文できるそうです。

今や情報処理学会の学会誌「情報処理」の年1回の定期記事となった、世界コンピュータ将棋選手権の特集記事が今年も出ました。「コンピュータ将棋の不遜な挑戦」と名づけられたミニ特集は、昨年からさらに増えて37ページ(ミニ特集>小特集のようです)。最近になく分厚い今号の中でもかなりの存在感があります。目次から、各記事の1ページ目をブラウザで見ることができます。

特に今年は、10月に清水女流王将とコンピュータ将棋との対局が控えており、これが「不遜な挑戦」として紹介されています。登場するコンピュータ将棋が「あから2010」っと命名されたことも発表されています。続いて、例年通り世界コンピュータ将棋選手権の詳報と、そこへ投入された最新の研究の解説、プロ棋士による講評と続きますが、研究内容は「平均化パーセプトロン」や「マージン制御」を活用した棋譜からの学習の高効率・高精度化、および探索の大規模クラスタ化と、開発者にとって必読の内容。また今回講評を書いているのは、現在王位戦深浦王位に挑戦中(現在2勝2敗)の広瀬六段世界コンピュータ将棋選手権の現地解説でその内容に舌を巻いた様子が描かれており、トッププロもコンピュータの強さを認めています。加えて今号では、頭脳ゲームの研究者で将棋のアマチュア強豪でもある古作登さんが、コンピュータ将棋と対戦する人間棋士がいかにコンピュータの弱点を衝いて勝機を見出すか、という異色の記事を書いています。これはプロ棋士、特に清水女流王将にとって必読の内容。最後に、日本将棋連盟米長会長世界コンピュータ将棋選手権の講評と挑戦状対局の展望を書いています。

年1回のコンピュータ将棋特集は、「情報処理」で学会誌らしくない記事が多く読める貴重な機会でもあります。研究を紹介している記事は論文に近い内容で、ちんぷんかんぷんという方も多いと思いますが、通常の論文とは異なり、開発や勝負にかける心情や裏話などが散りばめられており、深みのある内容になっています。記事は情報処理学会のサイトで記事単位で購入することもできますが、例年よりさらに記事数が増えた今年は学会誌を1冊購入されることをお勧めいたします。図書館、あるいは多くの学校や職場の書庫でも見ることができるでしょう。

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