訂正(4/11): 第5局の先手・後手が逆だったため訂正いたしました。お詫びいたします。
第3回将棋電王戦第4局が昨日4月5日(土)に行われ、ツツカナが135手で森下卓九段に熱戦の末勝ち。シリーズではコンピュータ将棋チームが3勝目をあげたことになり、最終第5局を待たずして勝ち越しを決めました。
本局の戦型は相矢倉。後手の森下九段が中央から攻めて駒得し、中盤で優位に立ったと思われました。しかしツツカナもしぶとく受けて決め手を与えず、手数をかけて自陣の厚みを立て直すコンピュータ将棋らしからぬ戦術を披露。終盤は森下九段の攻めを逆用して反撃する形で優位を奪い返し、最後に鮮やかな即詰めを決めました。
本局、ベテラン棋士の奮闘、という期待感もあってか、ニコニコ生放送の番組の視聴者数が大幅に増えました。森下九段はその期待に応え、序盤の意識的な早指しと仕掛けの選択を披露。これは自身の棋風と経験を活かして周到な準備のもとに遂行された有力な作戦と想像されます。一時は森下九段にも大きなチャンスがあり、作戦が実ったかと思われましたが、ツツカナの深く正確な読みに対して決め手をつかむことはできませんでした。局後の記者会見における森下九段の「人間側も盤駒を使って戦うべき」との発言は、コンピュータ将棋の精緻な読みの力を認めたもの、とも考えられます。コンピュータ将棋は「頭の中に将棋盤を作る」ことが完璧にできるため、人間にとってのハンディキャップを補う考え方として、人間側が別の将棋盤と駒を用意して自由に動かして考えることを可能にする、というルールの導入は有力な選択肢なのではないでしょうか。少なくとも、コンピュータ将棋の機能を制限する「レギュレーション」に比べて明らかに筋の良いルールといえるでしょう。
来週4月12日(土)の最終第5局は、▲屋敷伸之九段-△ponanzaです。団体戦としてはコンピュータ将棋チームの勝ち越しが確定し、白か黒か、という見方では大きな山を越えたと見られますが、大将戦という意味の大きさ、そして最終成績が4勝1敗となるか、3勝2敗となるか、インパクトの違いは小さくないと思われます。何より、プロ棋士の対コンピュータ将棋戦術をもう一度見られる貴重な機会であることには変わりがありません。依然として番組が注目されます。