Archive for コンピュータ将棋

情報処理Vol.54 No.9「現役プロに勝ち越したコンピュータ将棋」

情報処理2013年09月号


出版後1ヶ月経過してしまいましたが、遅ればせながら紹介いたします。情報処理学会が発行する情報処理2013年09月号に、ミニ特集「現役プロに勝ち越したコンピュータ将棋」が33ページにわたり掲載されています。今回は、今年3月〜4月に行われた第2回電王戦、および今年5月の第23回世界コンピュータ将棋選手権を合同の主題とし、対局の内容と、コンピュータ将棋に搭載された最新の技術について解説されています。

世界コンピュータ将棋選手権の特集は毎年お馴染みになりましたが、今回は電王戦の記事と合同になっていることから、対局の内容は第2回電王戦の5局がより詳しく解説されています。そのため、コンピュータ将棋を迎え撃つ棋士側の戦略、およびそれを見越したコンピュータ将棋の戦略が大きな関心事となっているほか、いわゆるXディ後についての論考にも多めの誌面が割かれています。

冊子は情報処理学会の会員向けに発行されていますが、こちらに非会員のための購入方法が記されています。この記事からはAmazonへのリンクが使用できます。電子版もあります。

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コンピュータ将棋協会9月例会のお知らせ

追記(9/14): 議題を追加/一部加筆しました。今回は内容盛りだくさんです。
9月のコンピュータ将棋協会例会(隔月)は通常どおり第2土曜日に開催されます。

  • 日時: 9月14日(土) 15:00~
  • 場所: 電気通信大学 西9号館3階
  • 議題:
    • コンピュータ将棋の初期の歴史について(清愼一さん招待講演)
    • コンピュータチェスのStockFishについて(山下宏さん講演)
    • 第24回世界コンピュータ将棋選手権について
      • 次回選手権のルールについて(ルール委員会、質疑応答)
    • ゲーム情報学研究会(JAIST)
    • ICGA(CG,CGIW)およびイベント(慶応大学)
    • 今後のイベント(GPW@箱根)
    • 対局サーバテスト


より大きな地図で 電気通信大学西9号館 を表示


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恒例の対局サーバテストも行うことができます。コンピュータ将棋のソフトとハードをご持参いただければ、事前登録がなくてもその場でログイン名を設定してテストを行っていただけます。多くの参加者、特にコンピュータ将棋開発者の皆さんの参加をお待ちしております。

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プロ初の公開アドバンスト将棋大会 あす開催

前回のブログ記事で割愛してしまいましたが、第3回電王戦の関連イベントとして、電王戦タッグマッチがあす8月31日(土)に開催されます。内容はこちらのサイトにあるように、プロ棋士がコンピュータ将棋を駆使して対局するトーナメント大会。出場ペアは第2回電王戦で相まみえた同士の棋士とコンピュータが組んだ5ペアです。1日の間に4局が指され、優勝が争われます。

これは「アドバンストチェス」と同じく、人間とコンピュータの力を合わせてよりレベルの高い将棋を指そうという企画。以前の記事でご紹介した「アドバンスド将棋は最強コンピュータ将棋に勝てるか?」は2人のアマチュア強豪がコンピュータ将棋と組んで別のコンピュータ将棋と1局ずつ指す企画でした。プロ棋士による公開されたアドバンスト将棋はこれが初の試みとなります。注目はなんといっても、プロ棋士がいかにコンピュータ将棋を活用するか、という点。人間と計算機の双方の長所をどう使うか、いかに役割分担するか、という趣は通常の棋士の将棋ともコンピュータの将棋とも異なりますが、レベルの高さは間違いなく期待できるうえ、プロ棋士のコンピュータ将棋観も垣間見えることでしょう。

この模様は生放送が予定されており、すでに予約受付中(視聴には会員登録が必要です)。ニコファーレにて大盤解説会も行われます。

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第3回電王戦は「公募」「予選」「ホモロゲーション」で開催

本日8月21日午後、第3回電王戦の発表会が行われ、その模様が生放送(予約可能な会員のみ視聴可能)されました。多くのファンが期待したとおり第3回電王戦が実施されることが正式に発表されました。

第3回電王戦は、日本将棋連盟プロ棋士5名とコンピュータ将棋5チームによる団体戦であること、3月から4月の間に5局の対局が行われる点が第2回電王戦と同一です(開催は2014年)。第2回と異なる主な点は以下のとおりです。

  • 出場するコンピュータ将棋は公募されます。参加受付は本日から9月29日(日)までこちらのサイトで行われています。
  • 公募されたコンピュータ将棋は「将棋電王トーナメント」という予選を兼ねた大会に参加し、上位5チームが第3回電王戦への挑戦権を得ます。「将棋電王トーナメント」は総額500万円の賞金が用意されています(分配方法などの詳細は未定のようです)。
  • コンピュータ将棋は主催者が用意した機器を使用しなければなりません。ルール文書(PDF)によれば、6コアの汎用CPUで動作する統一機器のようです。前回のGPS将棋のような大規模なシステムは使用できないことになります。
  • 第3回電王戦出場棋士は、対戦するコンピュータ将棋と同一のハード・ソフト環境で事前に練習対局する機会が得られます。前回もコンピュータ将棋側の好意で一部のソフトウェア(同一性は保証されていない)がプロ棋士側に提供されましたが、今回は制度化され参加全棋士に本番と同一の環境での練習が約束されています。

ハードウェアを統一する方式は、かつて国際将棋フォーラム内で行われていたコンピュータ将棋王者戦で採用されていました。現在は世界コンピュータチェス選手権ソフトウェア部門で採用されています。今回それらの場合と異なるのは、出場棋士の練習対局に本番と同一の環境を提供しなければならないことから、本番以前に開発を凍結する必要があると考えられる点です。言わば、モータースポーツでホモロゲーション(制約を伴う機器認証)と呼ばれる方式に近いルールになっています。

上記のとおり、第3回電王戦に参加できるコンピュータ将棋はトーナメントの結果で決まりますが、プロ棋士の側は屋敷伸之九段の参戦が決まっています。他4名もほぼ内定しているとのことで、第2回よりも高段の棋士が出場予定であることが示唆されていますが、タイトル保持者は出場しない予定のようです。

前回の第2回電王戦では、プロ棋士チームは1勝1分3敗とコンピュータ将棋チームに負け越す結果となりましたが、次回第3回はプロ棋士チームが巻き返すことが期待されています。ルールも前回に比べて明らかにプロ棋士側に有利になっています。特に事前練習の機会が保証されていますので、多数の練習対局を重ねてコンピュータ将棋に勝つ手順を見つけておいて、それを本番で忠実にリプレイすることができれば、今度はプロ棋士チームにも大いに勝機があるのではないでしょうか。

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コンピュータオリンピアード将棋部門は習甦が金

横浜市で行われた2013年のコンピュータオリンピアードが閉幕しました。将棋部門は習甦が金メダル、YSSが銀メダル、Seleneが銅メダルをそれぞれ獲得しました。もうひとつ5五将棋部門は、オランダから参加のShokidokiが金メダル、128分ノ1里眼が銀メダル、まったりゆうちゃんが銅メダルをそれぞれ獲得しました。皆さんおめでとうございます。

成績表は他の競技とともにこちらに掲載されています。将棋部門はエントリー6チームのうち欠場した1チームを除く5チームで先後両方の手番での総当たり戦で行われ、習甦は計8戦全勝で独走の金メダル。YSSSeleneはリーグ戦終了時点で5勝3敗と2位タイで並んでいましたが、リーグ戦終了後に銀メダル争奪戦1局が行われ(表には記載なし)、先手番のYSSが勝って銀メダル。世界コンピュータ将棋選手権でお馴染みの強豪が上位を占めました。

5五将棋部門は8チーム総当たり1局ずつで行われ、128分ノ1里眼との6戦全勝同士の最終局を制したShokidokiが金メダルでした。Shokidokiと同じく将棋と5五将棋の両方のリーグ戦に出場したまったりゆうちゃんはそれぞれ4位と銅メダルでした。

今年のコンピュータオリンピアードは、パシフィコ横浜で行われる多数の催し物のひとつとして開催される予定でしたが、直前にパシフィコ横浜で行われないことが発表され、急遽慶應義塾大学日吉キャンパス協生館に場を移して辛うじて開催されました。人間の各種競技会などの会場は各地に分散し、一大イベントとして相互の交流の機会とならなかったのは残念でしたが、世界コンピュータチェス選手権世界コンピュータチェスソフトウエア選手権、および多数の競技が例年通り合同で開催され、独特の雰囲気は健在でした。コンピュータ将棋およびコンピュータ囲碁の対局の一部はプロ棋士による解説があり、そのレベルの高さや時折見せる不可思議な手の解説はインターネットで生中継されました。将棋以外の日本勢では、囲碁9路盤・13路盤・19路盤部門をすべて制したZenの強さが際立ちました。

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