今年のゲームプログラミングワークショップ2017(GPW-17)は、例年通り11月に箱根で行われます(11月10日(金)〜12日(日))。11月のCSA例会がこれに事実上吸収される形で開催見送りとなるのも例年通りです。発表論文はまだ査読の段階のため発表されていませんが、こちらは例年以上に多彩なテーマが扱われるものと予想されます。
今年のGPW紹介記事は、例年とは少し趣を変え、今まで参加されたことのない方々にできるだけ注目していただけるような紹介を試みます。
昨年から今年にかけて、コンピュータ将棋とコンピュータ囲碁の状況は大きく動きました。昨年第1期、今年第2期が行われた電王戦は、コンピュータ将棋がトップクラスの将棋棋士に完勝し、棋戦も幕を閉じました。一方コンピュータ囲碁は、ディープマインド社のAlphaGoがやはり昨年と今年に世界トップクラスの囲碁棋士に完勝、こちらのイベントも終結が発表されました。ここまで強くなった結果、コンピュータ将棋を活用した研究によって藤井聡太四段がプロ入り29連勝という常識をはるかに超越した記録を打ち立てたことが広く知られ、その知名度を飛躍的に向上させました。コンピュータ囲碁も、囲碁のセオリーを大きく書き換え、世界各国の囲碁棋士に影響を与えています。
日本におけるゲームプログラミング研究の2つの主翼に大きな状況変化が生じたことにより、ゲームプログラミング研究者の関心事も大きく動くものと思われます。社会的にもこの進歩は人工知能研究の成果として広く認知される一方、この分野で突き抜けたことによって、人工知能研究の次の応用への関心が高まっています。そんな中、今年はどんな論文が集まるのか、今から予想してみるのも面白いのではないでしょうか。予想するにあたって、過去のGPWにて発表された研究の内容はGPWのサイトから見ることができます。
同時に、このようなタイミングは、ゲームプログラミング研究のコミュニティーが大きく拡がる好機でもあるように思われます。コンピュータ将棋、コンピュータ囲碁の知名度向上によってこの分野の認知度向上が期待できる一方、ディープラーニングやクラウドコンピューティングといった要素技術の重要性に注目が集まることで、広範囲の研究者や技術者にも参加の動機が生まれるのではないかと考えられます。
近年、ITエンジニアや研究者、特に人工知能技術を備える人材を多くの企業が求めている、と言われます。GPWは、最新技術を習得したいが敷居の高さが気になる、という人にとって好適な会といえます。厳密な学術的研究発表会である一方、ゲーム大会など各種イベントで他の参加者との親睦を深める機会が多く、気軽に楽しく参加できるようになっています。そのため、スキルアップのための勉強会等への参加経験が少ない人に特にお薦めできます。筆者も例年通り参加する予定です。多数の参加をお待ちしております。