Archive for コンピュータ

あから2010勝利、コンピュータ将棋の戦いは新たな段階へ

すでに広く報じられている通り、清水市代女流王将vsあから2010の対局は、振り駒で後手となったあから2010が勝利をおさめました。

コンピュータ将棋が女流のトッププロに公式戦で勝利したのは初めて。コンピュータ将棋の実力が改めて結果をもって示されました。たったひとつの勝利ではありますが、今後この1戦が基準線となってコンピュータ将棋の実力が語られることになるでしょう。プロ棋士とコンピュータ将棋の公式戦のマッチメークについても、次回以降はこの1戦を基準として行われることになるでしょう。

手数は86手と短めでしたが、白熱した内容でした。今回は当初からコンピュータが有利と考えられていましたが、中盤はほぼ互角とみられるねじり合いが続き、人間棋士の強さも証明されたと思います。対局場においても、人類の叡智が機械に屈してしまった、といったような悲壮感は対局後もなく、人間とコンピュータが互いを好敵手として認め合った、という前向きな空気を共有することができました。これからの戦いが、ますます楽しみです。

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プロ棋士とコンピュータ将棋の3年半ぶりの公式戦、間近に迫る

清水市代女流王将あから2010

追記(10/10): 大盤解説会の解説者を追記しました。重要なポイントのようですので。

清水市代女流王将vsあから2010、必見の大一番がいよいよ2日後に迫ってまいりました。ニュースとしての注目度も高まっており、その意味の大きさについては繰り返すまでもありませんが、ここでは直前情報をまとめておきます。

対局は、東京大学本郷キャンパス工学部2号館にて、10月11日(月・祝)13時に開始されます。持時間は各3時間、それを使い切ると1手1分未満に指すようになります。対局の手番は直前の振り駒で決められます。3年半前の「渡辺竜王vsボナンザ」のときは持時間2時間、ボナンザが先手とあらかじめ決められている対局でしたが、今回は違っています。

当日、会場となる工学部2号館の1階にて大盤解説会が行われます。入場料1,000円で受付は予約なし当日自由席のみ、定員500名とのことですので、同3階で行われる対局をリアルタイムの解説つきで観戦されたい方はお早めに会場に足を運ぶのが確実でしょう。解説者は佐藤康光九段藤井猛九段里見香奈女流二冠王ほか。なお当初、大盤解説会とともに指導対局も企画されていましたが、こちらは行われないことになったようですのでお気をつけください。

対局のインターネットライブ棋譜中継が、女流棋士会ファンクラブ「駒桜」特設ページと、日本将棋連盟モバイルにて行われます。いずれも有料会員限定のサービスで、今回は棋譜および映像の無料のライブ中継を行うサイトはありません。事後には、棋譜が公開される機会があるのではないかと思われます。

今回の対局について、コンピュータ将棋VS.清水市代・女流王将特設ブログにて2ヶ月前からブログ形式で詳細な背景記事が書かれています。すでに電子書籍の形でノンフィクショも公開されていますのでご一読を。執筆されているお二人の記者の方は先日のコンピュータオリンピアード金沢大会も取材しておられ、かなり精力的に活動されているようです。また、「渡辺竜王vsボナンザ」のときと同様、テレビ取材も行われているのではないかと想像されます。

最後に「あから2010」の仕様についてですが、169台からなるクラスターマシンという当初の発表から変化してはいないものの、現時点で「使用ハードウェアは当日変更される可能性もあります」という留保がつけられています。169台という構成はクラスタと呼ぶにはいささか慎ましいようにも思われましたが、さらに増強されて、かつてない規模に成長するのかもしれません。

当日は、ネット観戦、もしくは現地解説会に出かけられることを是非ともお奨めしたいと思います。当ブログ主も一昨年の第18回世界コンピュータ将棋選手権でのエキシビション対局の場に居合わせて実感しましたが、対局者・解説者・観戦者が共有する決着の刻の歴史的な空気、それは筆舌に尽くし難いものがあります。一人でも多くのファンが歴史の目撃者となられますよう。

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「コンピュータは七冠の夢を見るか?」で「あから」に勝つ?

将棋世界 2010年 11月号 [雑誌]


月刊将棋世界11月号の「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第10回にて、コンピュータ将棋に勝つための戦略について論じられています。いつもと逆の主旨になっているともいえますが、「将棋を指す人にとってわかりやすい解説」という本連載の特長に適したテーマである、ともいえそうです。

ここには、対人戦で採用することがほとんど考えられないような、かなり徹底した「コンピュータシフト」といえる対策も書かれています。特定の戦形を推奨しているというわけではありませんが、かなりあからさまにコンピュータ将棋の弱点を突こうとする内容で、実践するには抵抗感の強い部分もあります。しかし、それほど徹底しなければ、相当強い人間であってもコンピュータ将棋を打ち破ることは至難、という現実を反映した内容になっています。

なんといっても今回は、 「清水市代女流王将vs.あから2010」の直前企画です。そのため、もはやまったく歯が立たないと思っていたご家庭のパソコン将棋ソフトの最強レベルに久々に勝っていい気分になろう、という身近な話題では終わっていません。当然、あから2010に打ち勝つための戦術を論じています。そのために、コンピュータ将棋の事情に詳しい2人の全国レベルのアマチュア強豪にインタビューし、あから2010との戦いに臨むにあたって、事前研究と準備、あから2010の特徴、実戦の展開に応じた戦術、そして対局後の動向など、詳細にわたって力説しています。

清水女流王将vs.あから2010」は、会場の東京大学にて大盤解説が行われ(対局室は別室)、またネット中継も予定されています(ライブ中継は有料会員向けのみ)。この記事を踏まえ、コンピュータの急所をどう突くか、清水女流王将になったつもりで熟考しながら観戦すれば、熱戦にさらに力がこもるのではないでしょうか。

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コンピュータオリンピアード閉幕、将棋部門は激指が制す

少し時間が経ってしまいましたが、数々の思考ゲームでコンピュータたちが激戦を繰り広げたコ ンピュータオリンピアード2010金沢大会は、10月2日に閉幕しました。ネット中継を楽しまれた方も多いのではないかと思います。

日程後半に行われた将棋部門では、今年の第20回を含め世界コンピュータ将棋選手権4度の優勝を誇る激指が8勝全勝で金メダル、賞金1,000ユーロを獲得しました。続いて習甦が7勝1敗で銀メダルと500ユーロ、GPS将棋が6勝2敗で銅メダルと300ユーロ、Bonanzaが200ユーロをそれぞれ獲得しました。

将棋に先行して行われた5五将棋部門では、128分の1里眼が金メダルを獲得しました。

将棋以外で今回大きな話題になったのは、やはり日本棋院の藤沢里菜プロ初段と19路盤囲碁部門を制したEricaによるエキシビション対局が行われたことでしょう。Ericaが6子を置いての対局は序盤からEricaにミスが目立ち、12歳になったばかりの藤沢初段の完勝となりました。将棋と違い、囲碁はまだ人間との実力差がかなりあるようです。

コ ンピュータオリンピアード2010金沢大会の公式ページにはまだ結果発表がないようですが、北陸先端技術大学院大学ニュースに取り上げられています。また、激指の開発者の鶴岡慶雅さんによる英語版レポートが公開されています。

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コンピュータオリンピアード2010金沢、開幕

何度かお伝えしたとおり、コ ンピュータオリンピアード2010金沢大会が本日9月24日(金)、しいのき迎賓館にて開幕します(競技は2日目から)。10月2日に閉幕する予定のオリンピアードの最後の3日間、将棋と囲碁の一部の競技とイベントについては、ネット中継が行われることが、開幕直前になって発表されました。現地に行かれない方にも、一部の模様をリアルタイムで見ることができそうです。

同時に行われる、ゲーム情報学国際会議、コンピュータチェスの各クラスの世界選手権を含めたイベントスケジュールも、直前になって確定したようです。将棋の各クラスの競技は、日程後半に予定されています。

一部の競技のルールなども直前になるまで判明しなかったようで、非常におおらかな雰囲気ですが、ともあれ、日本ではまだ行われたことのない競技、コンピュータゲームの技術の進歩がどのような戦いを見せてくれるか、必見です。

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