Archive for コンピュータ

梅田望夫氏が読み解く人間の戦い、コンピュータの戦い

渡辺明竜王羽生善治名人が挑戦する第21期竜王戦の第1局が、今日からパリで行われています(ただいま1日目の昼食休憩が明けたところ)。そのネットでのライブ中継にて、リアルタイム観戦記梅田望夫氏が担当し、その中のエントリにて、渡辺竜王ボナンザとの対局を採り上げ、コンピュータ将棋について論じています。

梅田望夫氏といえば米国在住のIT企業コンサルタントにして執筆家、著名なブロガーでもあり、かつ熱心な将棋ファンとして多くのプロ棋士との交流でも知られている方ですね。梅田氏のライブ中継観戦記はこれが初めてではありませんが、今回はなんといっても永世位を争う空前のタイトル戦の開幕局、それも海外対局ということで、注目度が今までになく高いことは間違いありません。そんな中で、渡辺竜王を語る上での重要な要素としてコンピュータ将棋が挙がっているのですから、これは必読です。梅田氏ご自身のブログとも同時進行していますので、IT系の読者も多数この観戦記を目にすることでしょう。

Read the rest of this entry »

Leave a Comment

ゲームプログラミングワークショップ2008 参加募集開始

ゲームプログラミングワークショップ(GPW)2008タイムテーブルが発表されました。参加申込受付は10月1日にすでに始まっています。今年もこの季節がやってまいりました。コンピュータ将棋の開発者はもちろん、他のすべてのゲーム研究者・開発者の皆さんも是非ご参加を。申込受付は10/25(土)までですのでお忘れなく。それと初日は平日ですので、お仕事を休まれる方はお早めにご手配を。

恒例のナイトイベントは今年もGPW杯コンピュータ将棋大会GPW杯9路盤コンピュータ囲碁大会GPW杯5五将棋大会の3本立てです。コンピュータ将棋協会主催のGPW杯コンピュータ将棋大会は、コンピュータ将棋選手権でのLAN対局のための準備大会の役割を兼ねており、会場のLANに参加者のコンピュータを接続して行われます。インターネットではコンピュータ将棋オープン戦が、LAN環境ではGPW杯がサーバ対局のテストの場になるというわけですが、何よりGPW杯は他のコンピュータ将棋開発者の皆さんと直接交流できるのが楽しみです。

将棋プログラムがインストールされた、イーサネットへの接続が可能なPCとイーサネットケーブル1本をお持ちくだされば、どなたでもその場でGPW杯コンピュータ将棋大会に参加できます。その場でログインアカウントを作ることもできます。

モンテカルロアルゴリズムの進歩でますます急速に強くなっているらしいコンピュータ囲碁と、5五将棋プレ大会で神の領域が見えてきた? 5五将棋の研究と実戦も見られます。もちろん他のゲームの研究も盛り沢山。初めての方も大歓迎です。土曜日にはシークレットイベントもありますよ。

Comments (2)

第10回コンピュータ将棋オープン戦 参加者募集のお知らせ

第10回コンピュータ将棋オープン戦が、10月19日にインターネットにて行われます。今回は、第13回ゲームプログラミングワークショップ2008 (GPW-08) GPW杯コンピュータ将棋大会のプレ大会、という位置づけです。ネット対局のチェックが必要な方から、勢いのおもむくまま飛び入り参加の方まで、あらゆる参加者、そして観戦者を歓迎いたします。 参加資格はCSAサーバ プロトコルに対応していることで、人間が手動操作で参加することもできます。その場合、高田淳一さんが公開しているJava Appletなどが利用できます。参加費はもちろん無料。 オープン戦の模様は、ネットライブ中継される予定です。 詳細な手続きや日程などについては、こちらをご覧ください。ネットワークの状態によっては、時間切れ負けが不可避な場合も生じえますが、ご了承ください。

多数のご参加をお待ち申し上げております。

ところでお知らせをし忘れていましたが、10月11日(土)、電気通信大学にて5五将棋プレ大会が開催されます。第2回UEC杯5五将棋大会に向けての、人間とコンピュータのための大会ですが、残念ながらKIDS部門はプレ大会が行われなくなったようです。週末のコンピュータ将棋イベントが続きます。

Comments (1)

人智に迫るコンピュータたち

PC Onlineオフビジネス お天気キャスター 森田正光さんへのインタビュー記事「天気予報も将棋もコンピューターに負けちゃいそう。(page:2/2)」:

それは昔の話で、いまはコンピューターの数値予報が人間の経験知を上回っています。数値予報を人間が妙に直すと、かえって間違ってしまうんです。例えば、1990年11月30日に、観測史上最も遅い台風が紀伊半島に上陸しました。その5日前から、数値予報は上陸を予測していたんです。私は経験知から「まさか」と思い、そのことを新聞にも書きました。そしたら、コンピューターの予測通りに台風が来た。このときは本当にショックで、それ以来、私は数値予報の信奉者です(笑)。そして、数値予報にはむやみに触らず、その背景をわかりやすく解説するお天気キャスターになりました。

(中略)

24歳のとき、先輩に負けたのが悔しくて、将棋教室に通ってアマ三段まで取りました。たいていの人には負けないんですが、3年前に、「激指(げきさし)」という将棋ソフトに負けたときはものすごくショック。去年は、「ボナンザ」というソフトが渡辺明竜王と対戦しましたが、あの強さにもびっくりしましたね。悔しいけれど、天気予報も将棋も、コンピューターに負けちゃいそう。勝ち負けではなく、人間だからこそできることに目を向けるべきなんでしょうね。

気象のプロにとって、コンピュータの予報技術の進歩は間違いなく気象学の進歩であり、予報士の権威の失墜を意味しないことはいうまでもありません。森田さんにとってのXデーは、1990年11月30日だったのでしょうか。それはショックを受けた日ではあっても、失意の日、悲劇の日ではありません。

気象予測や将棋のように、コンピュータの実力が人間のエキスパートに迫る、あるいは追い抜くといった場面は、今後もっともっと多くの分野で見られる光景となるでしょう。ゲームの世界ではオセロやチェスがすでにその日を迎えて久しいですが、人間のエキスパートが地位を失うようなことは起きていません。8日前の9月4日に行われた、第7回情報科学技術フォーラムイベントとして行われた、コンピュータ囲碁のCrazyStone青葉かおり四段日本棋院)に挑戦した八子の置碁対局はCrazyStoneが勝ち、モンテカルロ碁の進歩を示しました。王銘逅ャ九段の見立てから推測する限りでは、CrazyStoneは八子置かせてもらったアドバンテージを早い段階で浪費してしまったのにもかかわらず逃げ切り勝ちを収めたようで、もしかするともっと少ないハンディキャップが妥当な手合なのかもしれません。とすればコンピュータ囲碁は、コンピュータ将棋以上の速度で進歩しているといえ、こちらの世界でもその光景が確実に近づいているといえそうです。王銘逅ャ九段もそのことを予期し、「万一、近い将来に碁のXデーを迎えたとしても、敵はしょせん完璧ではなく、つねにリベンジ可能です。そのときこそ、碁打ちが神の道を目指す本当の旅が始まる、と言えるかもしれない」と結んでいます。

身近なところでも、デジカメやプリンタが人物像を認識したり、高い精度のスパムフィルタがメールを仕分けたり、と、知能的な技術はいつの間にか広まっています。ロボットとして初めて2足歩行を実現したASIMOは今や走れるようになり、初音ミクはチューニング次第で人間顔負けの歌声を披露する…それらは人間を打ち負かすのではなく、人間との関係を深めるのでしょう。

Comments (4)

「情報処理」8月号に「コンピュータ将棋は止まらない」

情報処理学会会誌「情報処理」2008年8月号に、第18回コンピュータ将棋選手権の報告が掲載されています。コンピュータ将棋選手権は今や「情報処理」のレギュラー記事になっており、昨年も当ブログにてご紹介いたしました。しかしながら、昨年が5ページの単独記事だったのに対し、今年一昨年以来のミニ小特集となっています。えらく小さい特集かと思いきや、一昨年の20ページを超える26ページの特集。冒頭の記事のタイトルには、Xデーの文字が躍ります。

今回の特集は現役プロ棋士の寄稿が2本立てで、IT研究者や技術者だけでなく将棋ファンにも読んで欲しい内容になっています。日本将棋連盟理事の中川大輔七段が、第18回コンピュータ将棋選手権の4日後の公式戦で棚瀬将棋が指した手を採用して勝利を収めたことは、将棋ファンの間でもすでに有名になっていますが、中川七段がその心情を解説記事で語っています。ご本人による述懐は将棋関係のメディアを含めても初めてかも? 主な内容は、その手が指された将棋を含む、棚瀬将棋vs加藤幸男さん、激指vs清水上徹さんの2局のエキシビション対局の解説です。もうひとつは安食総子女流初段による総評で、こちらは実は一昨年に続いて2年ぶりの寄稿。その実直な内容が2年間でどのような変化を見せたか、読み比べてみてはいかがでしょうか。

情報処理学会会員でない方は、オンデマンドサービスで購入されるか(追記あり)、あるいは「情報処理」が置かれている図書館ないしは書庫をご利用ください。情報系の学部のある大学や高専等の図書館には置かれている可能性が高いでしょう。また情報系の職場にお勤めの社会人の方は、職場の書庫に置かれているかどうか一度お確かめください。

将棋ファン向けの情報ばかり紹介してしまいましたが、さすがに学会誌だけあって、分量的にはコンピュータ将棋の技術に関する論文が主となっています。優勝した激指、準優勝の棚瀬将棋の開発者自身による解説が掲載されていますので、コンピュータ将棋開発者は無論必読。ほか、A級リーグ指し手1号はオリジナルハードウェアということで写真入りの紹介。そしてXデーについては、思い入れに満ちた予測記事が学術誌の中で異彩を放っています。何やら思わせぶりなお話も書かれていますので、噂好きな方も是非ご一読を。

追記(8/23): オンデマンドサービスは記事個別のPDFファイルの販売のみとなっておりますので、雑誌を購入される方は、情報処理学会ウェブサイトの図書購入のページから図書購入・連絡フォームに入り、必要事項を記入して、「情報処理」 Vol.49 No.8をご注文ください。図書購入のページにあるとおり、会員番号等の入力は割引購入のためのものですので、非会員でも購入可能です。税込定価1,680円ですので、オンデマンドサービスで記事を3通以上購入するよりも安くなります。

Comments (4)

« Newer Posts · Older Posts »