Archive for 将棋

将棋世界「電王戦」「世界コンピュータ将棋選手権」「森田さん」

将棋世界 2013年 07月号 [雑誌]

月刊将棋世界2013年7月号にて、コンピュータ将棋に関する3つの特集記事が実に計29ページにわたって掲載されています。このほかの記事中でもコンピュータ将棋の話題が多く取り上げられ、総計で30ページを優に超えています。コンピュータ将棋関係者なら今月号はぜひ読んでいただきたい号です。

ひとつ目は「船江恒平・佐藤慎一が語る電王戦 われらはかく戦った」。大川慎太郎さんが15ページにわたって、第2回電王戦を戦った佐藤慎一四段船江恒平五段へのインタビュー記事を書いています。当ブログでも前々回の記事に書いたとおり、将棋世界6月号にて第2回電王戦の全5局の内容を伝えていますが、今回は第二局第三局を深く掘り下げています。出場の決断からコンピュータ将棋との対局の準備、対局中の思考、そして戦後の心境までを2人の棋士から詳しく引き出しています。真剣勝負のさなか、コンピュータ将棋のどのような能力を警戒し、どこに勝機を見出したか、を2人の棋士が事細かに述懐していて、コンピュータ将棋の特性や課題を分析する上でも、またこれからの人間vsコンピュータの戦術研究を行う上でも、正確かつ重要な情報が得られるように思います。

ふたつ目は毎年掲載していただいている、第23回世界コンピュータ将棋選手権の紹介記事。昨年と同じく松本哲平さんの執筆10ページ。今回も個性的な参加者の技術、好局・注目局のポイント、開発者インタビューがバランスよく紹介され、また最後の優勝争いのシーンが時系列で劇的に、いささかセンチメンタルに書かれています。

みっつ目は、当ブログの前回記事にも紹介した森田和郎さんの追悼記事。森田さんの同志というべき3氏の座談会の内容が4ページにわたり掲載されています。故人の数々の業績とエピソード、そして技術進歩の系譜を知る上で必読の内容といえるでしょう。

このほか、世界コンピュータ将棋選手権ですっかりおなじみの教授勝又清和六段が「突き抜ける! 現代将棋」にて、コンピュータと入玉、およびGPS将棋が第2回電王戦で見せた新手について詳しい論考を披露しています。また、青野照市九段も「将棋時評 -棋道哀楽-」にて、第2回電王戦の感想を書いています。

将棋世界は一般書店で購入できるほか、iPad版でも最新号が購入できます。iPad版には盤面表示を動かす機能もありますのでお勧めです。

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森田和郎さん 1955-2012

第19回世界コンピュータ将棋選手権にて。写真左が森田和郎さん。
第19回世界コンピュータ将棋選手権にて。写真左が森田和郎さん。

月刊将棋世界2013年7月号、および週刊将棋2013年6月5日号(Twitter)にて、プログラマーの森田和郎さんの追悼記事が掲載されています。森田さんは昨年亡くなっておられましたが、事実は1年近く伏せられており、新聞各紙の訃報等も将棋世界週刊将棋を追う形となっています。

森田さんが開発し1985年に発売された森田和郎の将棋は発売当時、長期にわたって将棋ソフトの実力トップの座に君臨しました。その後森田将棋はファミリーコンピュータ・Windows等多数のプラットフォームに移植され、コンピュータ将棋ゲームソフトを一大ジャンルとして確立する役割を果たしました。技術の普及にも尽力され、コンピュータ将棋協会の設立にはメンバーとして加わりました。世界コンピュータ将棋選手権(当時はコンピュータ将棋選手権)では森田将棋第2回選手権に優勝しています。著書は、コンピュータ将棋―あなたも挑戦してみませんか (Information & Computing)、など。

森田さんの名声はコンピュータ将棋界にとどまるものではありません。森田和郎の将棋発売の3年前、個人向けコンピュータ(パソコン)の普及黎明期だった1982年に、エニックス(現スクウェア・エニックス)が開催した第1回ゲーム・ホビープログラムコンテスト森田のバトルフィールドを出品して最優秀プログラム賞を受賞。同じくコンテスト受賞者の中村光一さん(現(株)スパイク・チュンソフト代表取締役会長)らとともに出品作品を市販してベストセラーに育て、新時代の「名前で作品が売れる」スタープログラマーの先駆者となったのでした。

学生時代に(株)ランダムハウス(現(株)悠紀エンタープライズ)を設立し代表取締役社長に就任。森田オセロ・アルフォス・ミネルバトンサーガ・リグラス・サムライスピリッツ零…他多数のソフト開発のエピソードは、Togetterやインターネット検索等を利用して多数見ることができます。

一時代を築いたゲームプログラマーでしたが、森田和郎さんを一言で表すならやはり「森田将棋の森田さん」でした。世界コンピュータ将棋選手権には第1回〜第9回まで出場した後、冒頭の写真のようにその後も会場まで観戦に来ておられました。自身も将棋好きでアマチュア強豪、将棋の前にオセロを手がけたのもコンピュータ将棋の開発への準備という意味が強かったようです。飾らない人柄で、コンピュータ将棋協会例会やゲームプログラミングワークショップでも熱心に技術論を語っておられました。今年、コンピュータ将棋が初めて現役プロ棋士に対して勝利を収めた第2回電王戦を生前に見られなかったのは、残念というほかありません。

享年57歳の若さでした。心からお悔やみを申し上げます。

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第2回電王戦の専門誌での評価

将棋世界 2013年 06月号 [雑誌]

今月初めに発売された、月刊将棋世界こちらは電子版6月号の「第2回電王戦全局レポート」にて、第2回電王戦の全5局の解説が掲載されています。例年、世界コンピュータ将棋選手権を将棋世界にて取り上げていただいていますが、今回はプロ棋士の対局ということもあってか、1局あたり2ページが費やされ、より詳細に対局の内容が掘り下げられているといえます。

各対局の詳細を見ていくと、第一局は相手の無理攻めを誘う阿部四段の作戦が成功し終始リードを保ち快勝、第二局は細かく形勢が揺れるもponanzaが終盤の競り合いを制し勝利。第三局は大きく形勢が揺れる波乱の展開の末ツツカナが逆転勝ち。第四局は大波乱の持将棋引き分け。そして第五局は…と、戦いの機微が密度濃く伝えられています。将棋専門誌ゆえ、勝敗の分かれ目となった指し手が詳しく解説されています。

第3回の開催が期待されているものの未定とされている電王戦。もし第3回が行われれば、その勝負の内容は今回の戦いに強く影響されたものになるでしょう。5局すべてに相異なるドラマがあった第2回電王戦を踏まえ、プロ棋士のコンピュータ対策はどのように進化するか、今回3勝1敗1分で勝ち越したコンピュータ将棋チームはコンピュータ対策をどう迎え撃つか…を想像するのには読んでおきたい特集といえます。「コンピュータ将棋がプロ棋士に勝った」と大きく報じられてすでに社会の想像力を刺激している第2回電王戦、本稿を読んだ将棋世界の読者は、すでにさまざまな想像を巡らせていることでしょう。

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大波乱の幕切れ、優勝はBonanza

第23回世界コンピュータ将棋選手権の決勝リーグが本日行われ、リーグ戦5勝2敗のBonanzaが7年ぶり2度目の優勝を果たしました。

Bonanzaは総当たりリーグ戦の最終局、第7回戦でGPS将棋との直接対決による優勝争いに勝って優勝を決めました。第7回戦の全4局の中でもっとも遅く終局した本局は、GPS将棋が終始好調に攻めて勝勢を築き、最後にはBonanzaの玉に詰み筋が生じてGPS将棋の2連覇かと思われましたが、GPS将棋の大規模クラスタが残り時間切迫による並列処理の不協和と思われる現象を起こして詰みを逃し、対局が長引いたことによりGPS将棋の持時間がすべて消費され、Bonanzaの時間切れ勝ちと判定されました。

Bonanzaは最終局開始時には自力優勝のない状態でしたが、同じく最終局でYSS習甦に勝ったことで自力優勝の可能性が復活、自らの逆転勝ちで優勝が転がり込みました。Bonanzaは2006年の第16回選手権に初出場で優勝して以来の優勝。当時、これをきっかけに渡辺竜王との対局を翌2007年に実現し、現役プロ棋士との初の公式の平手戦として大きな注目を浴びました(結果は惜敗)が、昨年の第22回選手権では決勝リーグ進出を逃したため先日の第2回電王戦には出場していませんでした。

同5勝2敗ながら規定により準優勝となったのは第2回電王戦でコンピュータ将棋として現役プロ棋士との対戦で初の勝利を記録したponanza、次いで第3位には同5勝2敗のGPS将棋が入りました。

最後に決勝リーグの結果を掲載します。

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第23回世界コンピュータ将棋選手権、決勝リーグ進出8チーム決まる

追記(5/5): リンクを付加しました。

第23回世界コンピュータ将棋選手権は2日目の二次予選が終了。最終日の決勝リーグに進出する8チームが決まりました。

第2回電王戦に出場した5チームのうち今回の選手権に出場した4チームはすべて決勝リーグ進出。初の決勝リーグ進出を果たしたのは初出場のNineDayFeverでした。また昨年初めて2次予選落ちの苦渋をなめたBonanzaは2年ぶりの進出。さらにYSSは決勝リーグ進出の最多記録を22に伸ばしました。ほか、過去4度の優勝を誇る激指が進出しました。

今日の午後から始まったUSTREAM中継は、あすはほぼ全日程で行われる予定です。

あすの決勝はどんな苛烈な戦いになるでしょうか?

最後に、二次予選の最終順位順の結果をどうぞ。

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