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第1回将棋電王戦はコンピュータ将棋が勝利、新時代へ

ニコニコ生放送の視聴者数のべ30万人、およびそれ以上の人々に注目された第1回将棋電王戦の対局が行われ、113手でボンクラーズ米長邦雄永世棋聖(2003年に現役引退)を破りました。プロ棋士とコンピュータ将棋との対局は、昨年末にプレマッチが行われていますが、いわゆる「早指し」でない、充分な持時間が確保された対局としては清水女流王将(当時)vsあから2010との対局以来1年3ヶ月ぶりの日本将棋連盟公認対局。前回に引き続きコンピュータ将棋の勝利となりました。正棋士との対局は渡辺明竜王vsBonanza以来4年9ヶ月ぶりでしたが、引退しているとはいえ正棋士との公式の平手戦でコンピュータ将棋が初の勝利をおさめました。

ニコニコ生放送は、対局と大盤解説、そして対局後の記者会見の模様をのべ9時間を超えて生放送し続け、その模様は今でもタイムシフト視聴できます(1月15日時点ではプレミアム会員資格不要)。

この記者会見中、第2回将棋電王戦の開催概要が発表されました。当初、2013年中に船江恒平四段第22回世界コンピュータ将棋選手権優秀成績1チームが対戦すると発表されていましたが、規模が急遽拡大され、プロ棋士側5人と第22回世界コンピュータ将棋選手権優秀成績5チームで行われる団体戦に変わりました。今回のコンピュータ将棋の勝利により、もはやプロレベルに達したコンピュータ将棋の実力を1年にたったの1局で量るのは物足りない、との結論とみられ、コンピュータ将棋がまたひとつ新たな時代へとステップアップすることになりました。

今回の対局の特徴として、単に社会の注目を集めただけでなく、人間のプロ棋士が採用する作戦にも注目が集まった点が挙げられます。米長邦雄永世棋聖プレマッチと同じく今回も2手目に△6二玉と指す意表の作戦を採用。勝利には結びつかなかったものの、プレマッチと異なり今回は作戦が功を奏し、一時は人間有利の局面を築きました。従来は「機械に勝つか、負けるか」という結果のみに関心が払われやすい傾向がありましたが、今後はいかに戦うか、人間とコンピュータ将棋がいかに自らの長所を生かし、弱点を克服するか、という内容に注目が集まることが期待されます。プロ棋士がコンピュータ将棋対策に本気で取り組むことで、コンピュータ将棋がさらにそれを克服する努力が必要となり、コンピュータ将棋がますます進歩する時代が到来したようです。

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プロ棋士vs.コンピュータ将棋、将棋電王戦が間近に迫る

当ブログにて昨年末にご紹介したとおり、来週1月14日(土)に、日本将棋連盟会長を務める米長邦雄永世棋聖(2003年に現役引退)とボンクラーズの対局が行われます。

日本将棋連盟プロ棋士とコンピュータ将棋との公式対局は将棋電王戦と名づけられ、今回の米長永世棋聖との対局が第1回(昨年末の対局はプレマッチです)、続く第2回が2013年中に行われ、日本将棋連盟からは船江恒平四段が出場することも最近、発表されました。将棋電王戦は今後、毎年行われる棋戦となることが期待されます。

この対局の大盤解説会が当日、2会場にて行われることも発表されています。ひとつは9時50分より原宿ニコニコ本社サテライトスタジオにて、渡辺明竜王矢内理絵子女流四段による解説会が行われます。入場無料で現地集合、詳しくはニコニコ動画の番組情報をごらんください。この模様は、インターネットのニコニコ生放送にて9時50分から放映されます。もうひとつは、11時より、JR新橋駅(東京)日比谷口(西側)のSL広場にて行われます飯塚祐紀七段西尾明六段が解説を担当します。参加申込方法や入場料については情報がありませんが、恐らく申込手続き不要、入場無料と思われます。両方の解説を所望される方は、新橋にお出かけしつつ、ネット番組をタイムシフト予約されるのがよいでしょう。

また、1月8日(日)17時から、直前番組「決戦目前 米長邦雄が将棋電王戦を語る」が同じくニコニコ生放送にて放映されます。番組では将棋電王戦に挑む米長永世棋聖の意気込みに加え、第2回以降の将棋電王戦に関する情報も明かされることと思われますので、コンピュータ将棋ファンにとってはこちらも必見です。

ニコニコ生放送の試聴にはニコニコ動画のアカウントが必要です。アカウントをお持ちでない方はこの機会に手続きをお奨めします。また、直前特番として他にも第21回世界コンピュータ将棋選手権再放送、清水市代女流王将(当時)vs.あから2010の再放送などもあります。見逃してしまった方はこちらもチェックしましょう。

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第22回世界コンピュータ将棋選手権 参加者募集中

あけましておめでとうございます。今年もコンピュータ将棋をよろしくお願いいたします。

さて、当協会では、例年どおり昨年末に第22回世界コンピュータ将棋選手権の参加者募集を開始いたしました。申込受付は今月末までです。

昨年から変わった点のうち主なものを簡単に列挙しておきます。

  • 今回の会場は、一昨年の第20回選手権を開催した電気通信大学 西9号館にて行われます。2交替開催とお考えください。
  • 開催日時は5月3日(木、祝)〜5日(土、祝)の3連休中です(日付は昨年と同じです)。
  • 昨年の第21回選手権において、従来のような2次予選免除のシード権を認めませんでした。このため、すべての参加チームは2次予選までに登場します。決勝リーグを戦うチーム数は従来どおり8のままですので、2次予選の通過枠は従来より3増えて8となります。
  • その他の変更点については、第22回世界コンピュータ将棋選手権 参加者募集のお知らせの「前回に参加された方へ」以降をご覧ください。

多くのご参加のお申し込みをお待ちしております。募集期間中の1月14日(土)には、将棋電王戦米長邦雄永世棋聖vsボンクラーズの対局が行われ、大きな注目を集めることが予想されますので、開発者の皆さんが大いに刺激を受けられるのではないかと期待しております。この対局につきましては、直前にも当ブログから何らかのお知らせをする予定です。なお、同日に当協会の1月例会が予定されておりましたが、こちらは1月28日(土)に延期されました。こちらについても当ブログから直前にお知らせする予定です。

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プロ棋士vsコンピュータ将棋、2011年はコンピュータ完勝

清水市代女流二冠(当時)vsあから2010がプロ棋士vsコンピュータ将棋の3年ぶりの公式対局として行われたとき、プロ棋士vsコンピュータ将棋の対戦が毎年のように行われることが期待されました。それに続く対局として、今年10月に日本将棋連盟会長を務める米長邦雄永世棋聖(2003年に現役引退)とボンクラーズの対局が2012年1月に行われることが発表され、2011年は空白の年となるかと思われました。しかし年末になって急遽、来年の対局のプレマッチ(前哨戦)という形で2011年のプロ棋士vsコンピュータ将棋の対戦が昨日、実現しました

結果は85手でボンクラーズの完勝。引退棋士とはいえ、正規の将棋プロ棋士との公式対局において初めてコンピュータ将棋が勝利をおさめました。短時間の対局(持時間15分、切れた後は1手60秒の秒読み)だったこともコンピュータ将棋に有利に働いたと想像されますが、1局を通じてすべてがコンピュータにとって理想的に展開した結果となりました。内容については、日本将棋連盟の対局サイトである将棋倶楽部24の会員であれば、東京道場の棋譜検索ページにログインし、「米長邦雄」または「bonkras」の棋譜を検索して “2011/12/21 19:05” の対局を指定することによってすべての指し手を閲覧することができます(ブラウザでJavaプラグインが動作する必要があります)。

結果はすでに主要紙(読売朝日)のウェブサイトなどで広く報じられ、ソーシャルブックマークや2ちゃんねるまとめサイトなどでもすでに話題となっています。この対局の谷川浩司九段による解説がニコニコ生放送にてネット中継されましたので、これをご覧になった方々も多いでしょう。見逃してしまった方も、ニコニコ動画のプレミアム会員であればタイムシフト視聴で生放送の模様を再現できます。プレミアム会員登録ページはこちらです。

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GPW杯コンピュータ将棋は3者優勝

ご報告がたいへん遅れましたが、ゲームプログラミングワークショップ(GPW)2011中にて行われたGPW杯コンピュータ将棋大会は、リーグ表のとおりBonanzaGPS将棋Blunderの3者優勝となりました。皆さんお疲れさまでした。

熱戦の棋譜は、リーグ表の中の対戦相手の名前をクリックすると見ることができます(要Flash)。

今回は主催者の多忙につきやむなく2日目夜のみの開催となり、大会自体も小規模な参加者数にとどまりました。とはいえ、ますますハイレベルな大会となったことは間違いありません。

今回のGPWは、GPW杯将棋大会の直前に行われた特別イベント古作登氏&篠田正人氏 VS あから1/100のリベンジマッチに注目が集まりました。人類アマ強豪の合議とコンピュータ将棋との1戦は、今回もまたコンピュータの勝利となりましたが、特別イベントの後にGPW杯将棋大会と並行して行われた人間vsコンピュータの対局では人間が勝利する場面もありました。とてつもなく強くなったコンピュータ将棋にもまだ弱点があるようです。今後は、人間がコンピュータ将棋と対戦するときにいかにその弱点を突くか、コンピュータ将棋がいかにその弱点を克服するか、という点への社会的な関心と、その研究の重要性がますます高まっていくものと思われます。

もちろん、GPWの最大の目的である研究発表も例年どおり多彩かつレベルの高いものが並びました。GPWの論文は、昨年分よりこちらで予稿集が公開されていますので、GPWに来られなかった方も是非ご覧ください。今回は諸事情により簡潔なレポートとなりますが、来年もまたゲームプログラミング研究における重要なワークショップとして開催されるでしょう。

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