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GPW杯コンピュータ将棋はBonanzaが全勝優勝

GPW杯2010将棋大会

ご報告がたいへん遅れまして申し訳ありません。先月開催されたゲームプログラミングワークショップ(GPW)2010の中で11月12日(金)、13日(土)の両日に行われたGPW杯コンピュータ将棋大会は、リーグ表のとおりBonanzaが9戦全勝で優勝しました。おめでとうございます。Bonanza楽観(的)合議として出場した昨年に続く2年連続の全勝優勝と、箱根では圧倒的な強さを誇っています。全体的なレベルアップも顕著だったようで、今年は人として参加していただいた方々にとって過酷な結果となったようです。今回は前回のような大きなトラブルはどうやら避けられたようで、主催者側としてもホッとしています。皆さん深夜の激闘お疲れさまでした。

今年はリーグ表から棋譜にリンクするようにいたしましたので、掲載遅れをお許しください。未公開のままになっている昨年の棋譜もできるだけ早いうちに公開したいと思っています。

今回のGPW-10でも多彩な発表がありました。ゲーム一般に応用可能な技術から「立体ピクロス」のような特定のパズルに関するもの、英語の招待講演、「清水市代女流王将vs.あから2010」のかなりマニアックなレビューなどバリエーションに富み、これでパーティに参加して深夜のGPW杯3競技をこなして温泉につかったらもう息つく暇もない、というてんこ盛りの内容でした。

GPW-10を採り上げているウェブサイトとしては、以下をごらんください。

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「清水市代女流王将vsあから2010」将棋世界にて観戦記

将棋世界 2010年 12月号 [雑誌]


月刊将棋世界12月号は、「コンピュータは七冠の夢を見るか?」特別企画として、10月11日に行われた「清水市代女流王将vs.あから2010」の8ページにわたる観戦記を掲載しています。この連載らしく、体裁は一般の将棋ファンにとっておなじみの普通の観戦記スタイルをとりつつも、コンピュータ将棋独自の考え方を所狭しと凝縮する内容になっています。対局者の清水市代女流王将と、多数のプロ棋士が現地で検討を行う控室、というおなじみの顔ぶれに加え、「あから2010」の側は、激指GPS将棋BonanzaYSSの4者が「合議」を行う模様と、さらに作戦を立てる開発者、そして勿論多数の観客と、その「登場人物」の多さでは異色の観戦記、ともいえます。

特に勝負の趨勢が決まった場面では、各「登場人物」の動向が事細かに
取材され、戦いの機微が再現されています。11月12日(金)のゲームプログラミングワークショップイブニングセッションでも、この観戦記は貴重な資料となるでしょう。

観戦記だけでなく、今号の最初のページを見開いた左側には、清水女流王将がこの対局の初手を指す場面のカラーグラビア写真が掲載されています。開幕したばかりの第23期竜王戦七番勝負第一局に勝るとも劣らない話題性の高い勝負、と認められたことを示している、という意味でも、コンピュータ将棋にとって記念すべき号といえると思います(表紙の写真には竜王戦第一局が選ばれています)。

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ゲームプログラミングワークショップ2010 参加募集開始

第15回ゲームプログラミングワークショップ 2010 (GPW-10)参加申込受付が始まっています。金曜日を含む週末3日間、紅葉の季節の箱根で開催されるスタイルは今年も変わらず。11月12日(金)~14日(日)ですので、お仕事のある方はお休みのご手配を。

今年もプログラム (暫定版)は盛り沢山。ナイトイベントは今年もGPW杯コンピュータ将棋大会、GPW杯9路盤コンピュータ囲碁大会、GPW杯5五将棋大会コンピュータ将棋協会主催のGPW杯コンピュータ将棋大会は、世界コンピュータ将棋選手権でのLAN対局のための準備大会の役割を兼ねており、会場のLANに参加者のコンピュータを接続して行われます。なお、ネットでのコンピュータ将棋オープン戦は今秋も行いませんので、このナイトイベントがコ ンピュータオリンピアード金沢大会に続く腕試しの機会ということになるでしょう。

またイブニングセッションでは、清水市代女流王将vs.あから2010でのコンピュータ将棋の勝利を記念して『トッププロ棋士との特別対局 「清水市代女流王将vs.あから2010」を振り返る』が行われます。当協会の毎年5月の例会では、世界コンピュータ将棋選手権を振り返っていますが、今回は秋のイベントということで、はるかに参加人数の多いGPWで行えることになりました。何か新事実が聞けるかも?! これは楽しみですね。

招待講演も豪華。コ ンピュータオリンピアード金沢大会の19路盤部門で優勝したEricaの開発者と、人間との公式戦に勝利したコンピュータポーカーPolarisの開発者が、その技術をたっぷりと伝えます(講演は英語で通訳はなし)。

GPW杯コンピュータ将棋大会は、将棋プログラムがインストールされた、イーサネットへの接続が可能なPCとイーサネットケーブル1本をお持ちくだされば、どなたでもその場でGPW杯コンピュータ将棋大会に参加できます。その場でログインアカウントを作ることもできます。人としての参加者も歓迎します。

年々研究レベルも上がっていると評判のGPWですが、学生など経験の浅い人も気軽に参加できる点はこれまでと同じ。参加費はちょっとお高いですが、学生さんには少し優しいお値段になっています。コンピュータ将棋をはじめとして囲碁や5五将棋、その他の多くのゲームの開発者の方、もしくは興味をお持ちの方、多くのご参加を楽しみにしております。

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あから2010勝利、コンピュータ将棋の戦いは新たな段階へ

すでに広く報じられている通り、清水市代女流王将vsあから2010の対局は、振り駒で後手となったあから2010が勝利をおさめました。

コンピュータ将棋が女流のトッププロに公式戦で勝利したのは初めて。コンピュータ将棋の実力が改めて結果をもって示されました。たったひとつの勝利ではありますが、今後この1戦が基準線となってコンピュータ将棋の実力が語られることになるでしょう。プロ棋士とコンピュータ将棋の公式戦のマッチメークについても、次回以降はこの1戦を基準として行われることになるでしょう。

手数は86手と短めでしたが、白熱した内容でした。今回は当初からコンピュータが有利と考えられていましたが、中盤はほぼ互角とみられるねじり合いが続き、人間棋士の強さも証明されたと思います。対局場においても、人類の叡智が機械に屈してしまった、といったような悲壮感は対局後もなく、人間とコンピュータが互いを好敵手として認め合った、という前向きな空気を共有することができました。これからの戦いが、ますます楽しみです。

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プロ棋士とコンピュータ将棋の3年半ぶりの公式戦、間近に迫る

清水市代女流王将あから2010

追記(10/10): 大盤解説会の解説者を追記しました。重要なポイントのようですので。

清水市代女流王将vsあから2010、必見の大一番がいよいよ2日後に迫ってまいりました。ニュースとしての注目度も高まっており、その意味の大きさについては繰り返すまでもありませんが、ここでは直前情報をまとめておきます。

対局は、東京大学本郷キャンパス工学部2号館にて、10月11日(月・祝)13時に開始されます。持時間は各3時間、それを使い切ると1手1分未満に指すようになります。対局の手番は直前の振り駒で決められます。3年半前の「渡辺竜王vsボナンザ」のときは持時間2時間、ボナンザが先手とあらかじめ決められている対局でしたが、今回は違っています。

当日、会場となる工学部2号館の1階にて大盤解説会が行われます。入場料1,000円で受付は予約なし当日自由席のみ、定員500名とのことですので、同3階で行われる対局をリアルタイムの解説つきで観戦されたい方はお早めに会場に足を運ぶのが確実でしょう。解説者は佐藤康光九段藤井猛九段里見香奈女流二冠王ほか。なお当初、大盤解説会とともに指導対局も企画されていましたが、こちらは行われないことになったようですのでお気をつけください。

対局のインターネットライブ棋譜中継が、女流棋士会ファンクラブ「駒桜」特設ページと、日本将棋連盟モバイルにて行われます。いずれも有料会員限定のサービスで、今回は棋譜および映像の無料のライブ中継を行うサイトはありません。事後には、棋譜が公開される機会があるのではないかと思われます。

今回の対局について、コンピュータ将棋VS.清水市代・女流王将特設ブログにて2ヶ月前からブログ形式で詳細な背景記事が書かれています。すでに電子書籍の形でノンフィクショも公開されていますのでご一読を。執筆されているお二人の記者の方は先日のコンピュータオリンピアード金沢大会も取材しておられ、かなり精力的に活動されているようです。また、「渡辺竜王vsボナンザ」のときと同様、テレビ取材も行われているのではないかと想像されます。

最後に「あから2010」の仕様についてですが、169台からなるクラスターマシンという当初の発表から変化してはいないものの、現時点で「使用ハードウェアは当日変更される可能性もあります」という留保がつけられています。169台という構成はクラスタと呼ぶにはいささか慎ましいようにも思われましたが、さらに増強されて、かつてない規模に成長するのかもしれません。

当日は、ネット観戦、もしくは現地解説会に出かけられることを是非ともお奨めしたいと思います。当ブログ主も一昨年の第18回世界コンピュータ将棋選手権でのエキシビション対局の場に居合わせて実感しましたが、対局者・解説者・観戦者が共有する決着の刻の歴史的な空気、それは筆舌に尽くし難いものがあります。一人でも多くのファンが歴史の目撃者となられますよう。

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