Archive for 将棋

コンピュータ将棋は先後互角?

以前話題にしたfloodgateに関して、金子さんに、先手勝率と千日手率が調べられないかどうかお尋ねしたところ、さっそくfloodgate統計ページ作っていただきましたfloodgateの過去から最新までのすべての累積データが見られるようになったようで、これはありがたい。将棋はチェスほどではないものの先手がわずかに有利な競技といわれており、現にプロの将棋では先手勝率が約53%程度というのが近年の傾向のようです。これがコンピュータ将棋にもあてはまるかどうか、恐らく初めて信頼できる量の集計が得られるようになりました。

そのデータが早くも6,000局を超え、先手が3,000勝に到達しました。通信トラブルなど終局に至らなかった対局を除くと、戦績は先手の3,000勝2987敗50引分。先手勝ち越し…と思いきやその差はわずか13。ここまでほとんど先後互角、という結果になっています。

よく知られているように、終局に近づけば近づくほど強くなるのが現在のコンピュータ将棋の棋風です。裏を返せば、コンピュータ将棋の序盤はまだまだ物足りないのです。先手の得を最大限に生かすには、高度な序盤の構想力や定跡の深い知識が必要ですが、現在のコンピュータ将棋がそれを備えているとは考えがたいところです。その意味では、先手の得がないかのように見えるこの統計結果は、ある意味で予想通りといえます。

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オープンな技術とゲームのルール

世界コンピュータ将棋選手権の参加資格は、「思考部を自作し、かつそれにオリジナリティがあるものに限る。」となっています。通信や画面表示を行う部分などは、自作しなくても他の人のものを使わせてもらったり、複数の参加者が同じものを用いても構わないのですが、指し手を考え、決定する過程は必ず自ら作り上げていなければなりません。

仮にこのルールがなかったらどうなるでしょう。その場合、同じ思考過程をもつコンピュータ将棋が複数の名義で同時に参加しようとするかもしれません。極端な例として、実体がまったく同じ、あるいはごくわずかに変えただけのソフトでできているようなコピー参加者がコピーA、コピーB…コピーZとして参加するかもしれません。こうなってしまうと、たとえ実力の劣るソフトでも、その中のコピーFやコピーLは運よく予選を通過してしまったり、あるいはうっかり優勝してしまうかもしれません。このせいでもっと実力のある参加者の活躍の機会が奪われてはならないのは明らかです。したがってこの「オリジナリティ」ルールは実質的に、ひとりの開発者がひとつの参加チームでしか思考部分を開発することができない、という人員制限となっています。

通信や画面表示などの部分を複数の参加者で共用するだけなら、このようなコピースクラム問題は起きませんので、自作にこだわらず他の人が作ったものをどんどん活用し、できた余裕で思考部分の強化に集中していただきたいところです。今はほとんどのインターネットユーザが、多くのフリーソフトを便利に使いこなしている時代ですから、多くの人々が開発したソフトを相互に活用することの重要性はコンピュータ将棋開発者でなくても理解していただけると思います。近年は、ソフトが無料というだけでなく、ソフトの中身であるソースコードが公開されているオープンソースソフトウェアの存在感が高まり続けています。その代表格であるLinuxの名を聞いたことのない人はほとんどいないでしょう。ネットが普及した現在、自由に流通する大量のソフトによって、単に便利というだけでなく、高度な技術が世界の隅々に容易に行き渡るようになりました。

…と、ここで冒頭に書いたことを思い出すと、実は世界コンピュータ将棋選手権のルールは技術の普及を制限してしまっていることに気づきます。 Read the rest of this entry »

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読売新聞1面に渡辺竜王vsBonanza戦の話題

渡辺明ブログに書かれていることそのままのメモです。読売新聞の連載企画「日本の知力」の記事として、あす2月25日朝刊1面に将棋の話題が出るそうで、この件で渡辺竜王対Bonanza戦についての取材を受けているそうです。

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モンテカルロ将棋の試み

ブログをはじめとするコンピュータ将棋のWebサイトにて、モンテカルロアルゴリズムで先読みをする将棋プログラムを開発した、もしくは将来その予定、という報告が増えてきました。興味深い試みですので、メモを兼ねて各地のレポートを一度まとめてみます。

モンテカルロアルゴリズムについての解説は、YSSと彩のページの記事、モンテカルロ法で囲碁、将棋1.モンテカルロ法とは?がわかりやすいでしょう。ゲームへの応用については次章以降に書かれています。専門的な内容については、加藤英樹さんがコンピュータ囲碁の論文を和訳されていますので、こちらをお読みになることをお奨めいたします。以前「第12回コンピュータオリンピック・アムステルダム大会」「GPW-07第一報: ボナンザ学習とUCTが話題の中心に」でも紹介した、最近約3年の間にコンピュータ囲碁を革新的に強くしたモンテカルロ法の詳細は、ここに掲載されている論文で読むことができます。この技術をコンピュータ将棋にも使えないか、と考えるコンピュータ将棋開発者が増えてきたのです。

ブログや掲示板での発表は以下の通り。 Read the rest of this entry »

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水門が切り拓く世界

前回ご紹介したshogi-server@wdoor floodgateへの参戦はその後も増え、計10チームに到達しました(同一の開発者で設定の異なるものを1チームとして数えた場合)。名を知られていなかった強い選手も含まれています。

前回、コメント欄にて付け足しのようになってしまったshogi-server@wdoorの機能について再度説明しておきます。評価値と読み筋を送る仕様に対応しているコンピュータ将棋の棋譜には、読み筋と形勢判断グラフが表示されます。グラフは以前当ブログでご紹介したSVGを使って描かれていますので、この機会にSVGに対応しているFirefoxOperaなどのブラウザに切り換えるか、AdobeCorelSVG Viewerプラグインをインストールされることをお奨めいたします。 Adobeについては、SVG Viewerプラグインのサポートは昨年限り、と以前ご紹介いたしましたが、現在も配布されているようです。

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