やねうらお-よっちゃんイカを買いに行くのは控えてコンピュータ将棋に人生を捧げる男にて、双方連続王手の千日手は成立しないという記事が掲載されています。コンピュータ将棋との関連があまりなさそうではありますが、これが成立するかどうかでコンピュータ将棋や対局サーバのアルゴリズムに若干の影響がある、ということで、当ブログでも採り上げてみます。
先手と後手の双方が王手を続ける形での千日手手順は成立しうるか、という命題は昔から知られており、ほとんど間違いなくそのような手順が生じうる局面はありえない、と信じられています。仮にそのような手順が成立してしまうと、「連続王手の千日手は連続王手を行う側が手を変えなければならない」というルールにより、先手・後手が同時に反則負けの条件を満たしてしまう可能性があることになってしまいますので、ルールの整合性にも影響する問題です。
やねうらおさんの記事のコメント欄にて紹介されている、詰将棋おもちゃ箱の記録に挑戦!中の逆王手回数のあたりをご覧になればおわかりのとおり、このあたりのテーマは詰将棋作家間でも研究されています。実戦には出現しえないような局面を無数に生み出してきた詰将棋作家の手にかかっても、双方連続王手の千日手が可能な局面が創作されたことはなく、直感的にも可能性がありそうにない、とほとんどの人は考えるでしょう。しかしながら、記事に書かれているとおり証明は想像以上に複雑なため、現在においても厳密な証明は知られていません。
やねうらおさんの証明シナリオは、当ブログ主が一読した限りでは有力そうです。これを厳密化するためには、各補題を注意深く網羅的な表現に洗練しつつ、「玉以外の駒の移動による開き王手」などにも議論を割く必要があるでしょう。記事にあるとおり、「玉が動く手を手順に含めることはできない」という事実がかなり強力なので、反例が作れそうもないことにはすぐに思い至るのですが、にもかかわらず分析すればするほど証明が難しく感じられるという不思議な命題。厳密な証明が与えられれば、ゲーム情報学上の立派な業績となるはずですので、当ブログをお読みの皆さんもエレガントな証明に挑戦されてはいかがでしょうか。
なお、いろいろな例を考える過程で、将棋で連続逆王手は最高何回まで出来るのか? という記事にあるような図が想起されると思います。記録に挑戦!中の記録作も飛車の往復運動の構図を採用しており、恐らくこの構図より逆王手回数を稼げる構図はないでしょう(角の往復という構図もありますが、王手が長続きしません)。コメントにて、この構図を改良した提案がすでになされていますが、これで6四玉(4四玉)に「5五銀、同香、5四金、同香」、5三角、同香不成、5二桂打、同香、同飛、「4二銀(6二銀)、同角」まで成立しますね(依然として当ブログ主の環境からやねうらおさんのブログにコメントできないので、こちらで失礼)。
証明のヒントとして、将棋のルールが少し変わると状況が大きく変わる、という点を挙げておきます。たとえば、安南将棋のように駒の性能が変化するルールの場合や、シャンチー(中国象棋)の炮(パオ)やチャンギ(朝鮮将棋)の包(ポ)などがある場合には、双方連続王手の千日手が成立する局面を容易に作ることができます。問題としてはこちらの局面を作る方がずっとやさしいので、まずはこちらで軽くトレーニングしてから本題にとりかかると、イメージが湧きやすいかもしれません。また逆に、玉と桂以外の駒をチェスのクィーンに置き換えることで場合分けの手間を省いたほうがよい、という説もあるようですので、ルールをあえて変えてみるのも一策かもしれません。
やねうらお said
>> (依然として当ブログ主の環境からやねうらおさんのブログにコメントできないので、こちらで失礼)
例によってうちのblogにコメントが書き込み出来なくてすみません(´ω`)人
特定一名による荒らしがいて、そのプロバイダをIP範囲指定でblockしたのが原因です。IPをメールで教えていただけたら、そのIP付近を解除させてもらいます。
あとは、はてなIDがあれば、IPに関係なくコメントが書き込めます。
山田 剛 said
その後、やねうらおさんのブログ記事へのコメントとトラックバックにて議論がさらに進み、56手連続王手にまで伸びました。詰将棋マニアの間ではときどきこういう感じで盛り上がるのですが、詰将棋関連以外のネットのサイトでこのような光景は初めてかもしれません。ネットはマニアックな話題も意外といける、ということかもしれませんね。
なお細かいことですが、56手の図の初手1一飛は後手からの王手を防いでいるわけではないので、56手連続王手、55手連続逆王手、ということになりますね。
山田 剛 said
>1. やねうらおさん
1. のコメントは、スパムフィルタの承認待ちになっていました。当ブログの現在の設定は厳しすぎるようです。
とりあえずコメントを1件だけ承認しました。
スパムフィルタの設定は引き続き微調整いたしますので、申し訳ありませんが、スパムでない書き込みが有効になるまでもうしばらくご辛抱を。
長さん said
以下、「双方連続王手の千日手は存在するのかどうか」についてのコメントです。
日本将棋では、駒の動きが単純なので、双方連続王手は無理なのではないか。鉤行と天狗のある、
古典将棋の大大将棋以上で、終盤、残り駒数が少なくなると可能になるのではないか。一方が鉤行
による王手、他方が天狗による王手を避けるような陣形を少数の守り駒で敷いている布陣で、その中
に、王手を掛けることも可能な守り攻め兼用の、鉤行が一方に一枚、天狗が他方に一枚残っていて、
それぞれ王手を掛け続けるような局面で、「双方連続王手の千日手」が起こりえるような気がします。
山田 剛 said
鉤行と天狗では相当に複雑な動きが成立しそうですね。何か具体的な配置を発見・創作されましたら、また当ブログへコメントをお願いいたします。
長さん said
大大将棋の例:(他の将棋も盤と、玉
の名称が、ケースにより違うだけ。)
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□□□□□□□ろ王天□□□□□□□
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□□□□繋駒□□敵□□駒繋□□□□
□□□□□□□□邪□□□□□□□□
□□□□□□□い□鉤□□□□□□□
□□□□□□□□玉□□□□□□□□
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玉:味方の一枚だけ有る大大将棋の玉将
王:相手の一枚だけ有る大大将棋の玉将
鉤:味方の鉤行
天:相手の天狗
☆以下、四種は適当に駒の種類を選択。
駒:味方の小駒
繋:味方の小駒(駒)の繋駒
邪:相手の小駒(邪魔な駒。鉤行取り
にはなっていないとする。歩兵等。)
敵:相手の小駒(邪魔な駒)の繋駒
上の局面で相手の天狗で王手が掛かって
いるので、鉤行を「い」へ移動する。
すると、相手に、鉤行で王手が掛かるの
で、天狗を「ろ」の位置へ移動する。
すると、再び天狗で王手が掛かるので、
鉤行を元の位置に戻す。
すると、その鉤行で相手へ王手が掛かる
ので、相手も天狗を元の位置に戻す。
以下2回繰り返すと、日本将棋ルール
の千日手です。
山田 剛 said
>長さん
中将棋以上の駒の動きにはほとんど馴染みがないので難しいですが、なるほど成立していそうですね。
面白い図を紹介していただき、ありがとうございます。