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第3回将棋電王戦第5局はPonanza勝ちコンピュータ将棋4勝1敗

第3回将棋電王戦は最終第5局が昨日4月12日(土)に行われ、Ponanzaが130手で屋敷伸之九段に競り勝ち。第3回のシリーズとしてはコンピュータ将棋チームが通算4勝1敗となり、3勝1敗1引分だった昨年の第2回を上回る成績で終えました。

相掛かり模様の立ち上がりから屋敷九段の注文で横歩を取り合う戦型となった本局。中盤戦が始まってからはプロ間でも評価が分かれる優劣不明のねじり合いがしばらく続きました。終盤戦はPonanzaの一見奇妙な攻め方に対して屋敷九段の玉が盤面左側へと逃げ出し、入玉模様、いや相入玉か、という混沌とした場面もありましたが、屋敷九段のミスもあって最後はPonanzaが入玉を阻止して寄せ切りました。

団体戦としてはコンピュータ将棋チームの勝ち越しが第4局終了時点ですでに決まっていましたが、屈指の好カードである本局への注目が衰えた様子はなく、ニコニコ生放送の来場者数は70万人を超え、電王戦のこれまでの最高記録を更新しました。

全5局の内容を振り返ると、大きく勝ち越した理由は、中盤戦から終盤戦にかけてのコンピュータ将棋による指し手の精度の高さでしょう。プロでもミスが避けがたい難解な終盤戦で隙を見せない指し手の正確さは、第3局のように早い段階で優位を確立して終局まで押し切らなければコンピュータ将棋に勝てないのではないか、と思い知らせるような強さがありました。電王戦の次回第4回の開催も期待したいところですが、コンピュータ将棋チームの完勝というべき今回の最終成績からしてマッチメイクは難航するかもしれません。本局後の記者会見でも、残念ながら次回開催は明言されませんでいた。しかし高額賞金が提供される将棋電王トーナメントについては、既発表のとおり昨年に続いて今年も行われることが記者会見で改めて示されました。

さて、来月には第24回世界コンピュータ将棋選手権が待っています。社会的な認知度を高めた今回の盛り上がりが引き継がれることと、さらにレベルの高い熱戦が期待されます。

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第3回将棋電王戦第4局はツツカナ勝ちコンピュータ将棋勝ち越し決定

訂正(4/11): 第5局の先手・後手が逆だったため訂正いたしました。お詫びいたします。

第3回将棋電王戦第4局が昨日4月5日(土)に行われ、ツツカナが135手で森下卓九段に熱戦の末勝ち。シリーズではコンピュータ将棋チームが3勝目をあげたことになり、最終第5局を待たずして勝ち越しを決めました。

本局の戦型は相矢倉。後手の森下九段が中央から攻めて駒得し、中盤で優位に立ったと思われました。しかしツツカナもしぶとく受けて決め手を与えず、手数をかけて自陣の厚みを立て直すコンピュータ将棋らしからぬ戦術を披露。終盤は森下九段の攻めを逆用して反撃する形で優位を奪い返し、最後に鮮やかな即詰めを決めました。

本局、ベテラン棋士の奮闘、という期待感もあってか、ニコニコ生放送の番組の視聴者数が大幅に増えました。森下九段はその期待に応え、序盤の意識的な早指しと仕掛けの選択を披露。これは自身の棋風と経験を活かして周到な準備のもとに遂行された有力な作戦と想像されます。一時は森下九段にも大きなチャンスがあり、作戦が実ったかと思われましたが、ツツカナの深く正確な読みに対して決め手をつかむことはできませんでした。局後の記者会見における森下九段の「人間側も盤駒を使って戦うべき」との発言は、コンピュータ将棋の精緻な読みの力を認めたもの、とも考えられます。コンピュータ将棋は「頭の中に将棋盤を作る」ことが完璧にできるため、人間にとってのハンディキャップを補う考え方として、人間側が別の将棋盤と駒を用意して自由に動かして考えることを可能にする、というルールの導入は有力な選択肢なのではないでしょうか。少なくとも、コンピュータ将棋の機能を制限する「レギュレーション」に比べて明らかに筋の良いルールといえるでしょう。

来週4月12日(土)の最終第5局は、▲屋敷伸之九段-△ponanzaです。団体戦としてはコンピュータ将棋チームの勝ち越しが確定し、白か黒か、という見方では大きな山を越えたと見られますが、大将戦という意味の大きさ、そして最終成績が4勝1敗となるか、3勝2敗となるか、インパクトの違いは小さくないと思われます。何より、プロ棋士の対コンピュータ将棋戦術をもう一度見られる貴重な機会であることには変わりがありません。依然として番組が注目されます。

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第3回将棋電王戦第3局は豊島七段勝ちプロ棋士1勝返す

第3回将棋電王戦第3局が本日3月29日(土)に行われ、豊島将之七段が83手でYSSに完勝。シリーズではプロ棋士チームが待望の初勝利をあげました。

本局は豊島七段が横歩取りに誘導しYSSが誘導に応じる、という展開で戦型が決定した後、20手目△6二玉に対して豊島七段が強襲を仕掛けて早くも優位を築きました。戦いが始まった時点での豊島七段の消費時間はわずか3分未満で、YSSの指し方を予測した周到な準備が明らかでした。

第3回将棋電王戦の前2局は、プロ棋士側がコンピュータ将棋側よりも先に多くの時間を消費して中盤の難所に突入、そこでコンピュータ将棋が優位に立ち(形勢がもつれることはあっても)勝ち切る、という展開でしたが、本局はプロが決断よく指して時間と体力を温存し、かつ優位を順調に拡大、という人間にとって理想的な展開でした。終了時刻も前2局に比べてかなり早い17時前。将棋電王戦通算では第2回阿部光瑠四段以来の勝ち星。プロ棋士を応援しながらも、どうしたらコンピュータに勝てるのかわからない、という途方に暮れる心境だった多くのファンも、かなり勇気づけられたのではないでしょうか。

20手目△6二玉と指す前の局面は定跡化されており、△4一玉や△5二玉が多く指される形です。それらを指していれば本局のように開始30手足らずで後手が劣勢になるようなことはなかったでしょう。したがって、YSSがそれらの定跡を搭載して定跡どおり指していればこの展開は避けられたと考えられます。ただし定跡どおりの指し手を増やした場合、相手の都合の良い定跡に誘導されやすくなるデメリットが生じることも多く、定跡の搭載はほどほどに、という開発方針がコンピュータ将棋では主流のようです。しかし定跡を知らないために悪手を指すリスクも当然あり、事前研究のしやすい第3回将棋電王戦ではそのリスクが大きくなると考えられます。コンピュータ将棋にとって、事前知識としての定跡をどの程度、どの部分で持っておくのが最善か、という課題が突きつけられた、と言えるかもしれません。あるいは、序盤でもっと深く読んで定跡に近い水準の手を確実に指せるようにすべきか、横歩取りのような激しい変化の多い形で特に深く読むよう調整すべきか、などを考えるべきかもしれません。

来週4月5日(土)の第4局は▲ツツカナ-△森下卓九段戦です。森下九段が勝てばプロ棋士とコンピュータ将棋の団体戦成績がタイとなって最終局を迎える一方、ツツカナが勝てば3年連続のコンピュータ将棋チームの勝ち越しとなる状況は変わりません。

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第3回将棋電王戦第2局はやねうら王が勝ちコンピュータ将棋連勝

第3回将棋電王戦第2局が本日3月22日(土)に行われ、やねうら王が手で佐藤紳哉六段に95手で勝ち。シリーズではコンピュータ将棋チーム2連勝となりました。

本局は初手▲1六歩から波乱含みの立ち上がりでしたが、急な戦いにはならず、先手やねうら王の四間飛車に後手佐藤六段の居飛車穴熊に落ち着いてじっくりした戦いに。その後の38手目△8六歩で、第1回からの将棋電王戦通算8局目で初めてプロ棋士側から仕掛けて戦いが始まりました。対するやねうら王の反撃は桂損を招いてやや無理気味かと思われましたが、6筋からの継ぎ歩攻めを成功させて優勢に。69手目▲6四同角が悪手で70手目△6三香から角がただで取られ混戦になったものの、充分な持時間を残していたやねうら王が結局勝ち切りました。

これまでの将棋電王戦の傾向と同様、プロ棋士側から見ると、おおむねコンピュータ将棋側よりも先に多くの時間を消費して慎重に展開を進め、やや有利と思われる局面に持ち込みましたが、はっきりとした優位が得られないまま中盤のねじり合いで形勢を損ね、粘りも及ばず、という内容でした。第3回将棋電王戦のルールでは、当ブログを含め、戦前にコンピュータ将棋が「丸裸」にされ、なすすべなくプロ棋士に敗れるのでは、との懸念が一部にありましたが、プロ棋士にとっても理想通りに戦うのは容易でない、ということが示されつつあります。持時間が早く減少することで急所の局面、本局でいえば先手の6筋の継ぎ歩攻めに対する受けを読む局面で残り時間に余裕がなく、プロ棋士の敗因になっているという印象を受けます。

本局の直前、既定の開発期間後に提出されたデバッグ版による対局を特例で認めるか、いや認めない、というやりとりがあって議論を呼びましたが、本番でのやねうら王は特に乱れた様子を見せず、悪手はあったものの明らかな誤動作は起こさず無事に対局を乗り切ったようです。ただし電王手くん佐藤六段の考慮中に目的なく盤上にアームを伸ばして思考や着手の邪魔になったと思われる場面が何度かあり、佐藤六段にとって精神的に気の毒な状況となっていたかもしれません。

来週3月29日(土)の第3局は先手豊島将之七段-後手YSS戦です。YSSがこれに勝てば早くも3年連続のコンピュータ将棋チームの勝ち越しが決まります。

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第3回将棋電王戦開幕、習甦が勝ちコンピュータ将棋先行

本日3月15日(土)、第3回将棋電王戦が開幕。第1局菅井竜也五段-習甦戦は習甦の勝ち。団体戦としてはコンピュータ将棋チームが先勝しました。

今回は第2回からルールが変わり、コンピュータ将棋へのハンディキャップが大きく、当初から苦戦が予想されました。当ブログでもプロ棋士チームが有利ではないかと予想しておりました。コンピュータ将棋の全ソフトが提出されてから約4ヶ月間、プロ棋士チームは来たるべき敵を先に入手して対策を立てることができるのに対し、提出後のソフトは一切の改良が不可能。対戦順の発表もソフト提出後でした。コンピュータ将棋側にとっては最悪の場合、終始プロ棋士の掌で踊らされ、ノーチャンスで敗れる、という展開も危惧されました。

しかし本局は習甦が作戦負けを喫するような展開にはならず、戦いが始まってからはじわじわと優位を広げ、不利な局面を一度も迎えない危なげない内容で快勝。第2回に続いて2回連続出場となる習甦の前回は阿部光瑠四段の術中にはまり、強みを見せられない展開で敗れましたが、今回プロ棋士へのリベンジを果たしました。

今回はコンピュータ将棋以外にも、開幕直前に明かされたロボットアーム「電王手くん」がコンピュータ将棋側の操作を行っており、技術面の注目度が高まっています。来週3月22日(土)の第2局佐藤紳哉六段やねうら王戦です。開幕局の結果を受け、さらに話題になりそうです。

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