Archive for コンピュータ

「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第8回は並列化

将棋世界 2010年 09月号 [雑誌]


月刊将棋世界9月号の「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第8回は、コンピュータ将棋の探索を並列処理によって高速化する方式を解説しています。

並列探索がなぜ必要か、の説明に始まり、そのためのアルゴリズムの解説と、n個のCPUで並列探索しても速度がn倍にならないことの説明、最後に例の清水女流王将との挑戦状対局に投入される予定のスーパーコンピュータの紹介とその学術的意義、というストーリーに沿った内容。並列化アルゴリズムについては、本職のプログラマでも頭の中を整理するのはなかなか大変なのですが、よく読むと理解できるようになっています。ここではアルゴリズムにPVS(Principal Variation Search、最善応酬探索)を使用するものとして述べられていますが、PVSがなぜ高速か、という決して容易でない理論の理解にも適した説明になっていると思います。

今回はかなり困難なテーマで、一般の読者が読みこなすのは大変と思われますが、並列処理の難しさがありつつも、その威力は明確に示されています。また、挑戦状対局が、将棋のみならず一般の情報科学分野に貢献する取り組みであることが理解できるのではないでしょうか。

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週刊将棋アマCOM戦自戦記 全局掲載完了

週刊将棋にて連載中の「第2回週将アマCOM平手戦」は、最新の7月14日号にて2回戦第5局の自戦記が掲載され、10週にわたって全10局の自戦記がすべて掲載されました。やはりコンピュータは強い、ということで、最終成績は発売中の最新号を購入してご確認ください。

次週週刊将棋7月14日号にて、対抗戦の総括が掲載される予定とのことです。

「コンピュータは七冠の夢を見るか?」でも述べられているように、コンピュータにもまだまだ意外な弱点があります。しかし、その隙はますます見えにくいものになっているようです。いかに団体日本選手権を制した最強の東大将棋部チームといえど、持時間の比較的短い対局でその弱点を突くのは至難の業だった、といえそうです。

挑戦状を受けて立つ清水市代女流王将は、果たしていかなる策を用意してこられるのでしょうか。そんな思いをめぐらすにも示唆に富む連載であったと思います。

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「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第7回も選手権特集

将棋世界 2010年 08月号 [雑誌]


月刊将棋世界8月号の「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第7回は、先月に続き第20回世界コンピュータ将棋選手権の特集。今回は6ページで、通常の連載形式に近い雰囲気です。

今回は、前回以上に実戦の局面を深く検討する内容。大きな話題になった稲庭将棋の作戦とその対策についての研究に多くの誌面を割いています。稲庭将棋の開発者、今野さんのインタビューを交え、コンピュータをいかに罠に陥れるか、対する相手はいかにしてその罠をかいくぐるか、という開発者同士の水面下の攻防がうかがえる点で、学術的な研究や人間同士の対局を採り上げた記事には見られない貴重な内容になっています。上位グループのほとんどすべてが、Bonanzaによって拓かれた機械学習による強化を取り入れる時代の趨勢を認めつつも、あえて開発者自らが機略を巡らす戦いをクローズアップし、現代のコンピュータ将棋の強さよりもむしろ課題をあぶり出す内容になっており、開発者にとっても読み応えのある記事になっているのではないでしょうか。

このほか、コンピュータ将棋がトン死を喫した場面の考察と、マルチコア化の傾向について論じています。

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今年のコンピュータオリンピアードは日本開催

追記: 参加申込のページには、「6月30日を過ぎた申込は倍の参加費がかかります」と記されていますので、参加できるプログラムがすでに完成している、もしくは参加の決意を固めている開発者の方々は、速やかに今月中に手続きを済ませておきましょう。アマチュアであれば参加費は世界コンピュータ将棋選手権より安価です。

コンピュータによる知的ゲーム競技を一斉に行うコンピュータオリンピアードは、15回を数える今年、初めて日本で開催されます。会場は石川県金沢市のしいのき迎賓館日程は9月25日から10月2日まで。18回を迎える世界コンピュータチェス選手権も例年どおり併催されます(今年から3部門の選手権になります)。加えて、最先端のゲーム情報学研究が発表されるゲーム情報学国際会議も併催されるアカデミックなイベントでもあります。

今年のコンピュータオリンピアードは、北陸先端科学技術大学院大学の創立・開学20周年を記念して地元の石川県にて行われるものです。コンピュータ将棋の開発者が多数存在する日本での初めての開催とあって、かつてない多数の開発者の参加が期待されています。また、将棋以外のゲームにも関心を持つ日本の開発者にとっても、チェスを含め計17部門の競技が行われるコンピュータオリンピアードの日本開催がめったにないチャンスであることはいうまでもありません。

もちろん、コンピュータゲームの祭典であるコンピュータオリンピアードを観戦するチャンスとしても貴重です。昨日お知らせした情報処理学会創立50周年記念事業として行われる清水女流二冠王とコンピュータ将棋 の対局の直前に行われるビッグイベント。今年の秋、少し長めの休みがとれそうだという人は是非参加、もしくは観戦に金沢を訪れてみてはいかがでしょうか? 開催される競技は、チェス3部門(無差別級、統一ハード、早指し)をはじめとして、将棋、5五将棋、囲碁2部門(9路盤、19路盤)、象棋(シャンチー、中国将棋)、ドラフツ(チェッカー)、コネクトシックス(五目並べから派生した六目並べ)、クリーグシュピール(チェス式ついたて将棋)、幽霊碁(こちらはついたて囲碁かな?)、ヘックス(六角形を敷き詰めた盤を埋めていくゲーム)、ハヴァナ(ヘックスに近いが勝利条件がやや複雑)、アマゾン(将棋と囲碁の両方の要素を導入した感じの10×10盤ゲーム)、コリドール(「壁」の要素を採り入れた9×9盤ゲーム)、アリマア(初形自由配置、一度に複数手を指す方式の変形チェス)です。

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清水女流二冠王vsコンピュータ、対局場と日付決まる

コンピュータ将棋界カレンダー今年秋の目玉、清水女流二冠王とコンピュータ将棋の対局場と日取りが、日本将棋連盟情報処理学会の双方から発表されました。10月11日ということは、第15回コンピュータオリンピアード金沢大会の終了後間もなく、ということになりますね。今秋、金沢、東京と立て続けにビッグイベントが行われることになります。

将棋連盟の発表によれば、解説会に加えて指導対局も行われるそうですので、一般の将棋ファンにとっても楽しめるイベントとなりそうです。一方、情報処理学会の発表によれば、今回の対局は情報処理学会創立50周年記念事業として行われます。実は4月2日の挑戦状の公開の際にも50周年のことはさりげなく触れられていたのですが、今回これを前面に押し出してこられたことで、その意気込みがうかがえます。

なお、持時間などの対局条件や当日の日程については未定、とのこと。

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