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将棋電王戦FINAL第4局はponanza勝ち、団体戦決着は最終局へ

本日薬師寺で行われた将棋電王戦FINAL第四局、▲ponanza – △村山慈明七段の一戦は、97手でponanzaが勝ちました。団体戦としては、当初2連敗でプロ棋士チームに先行を許したコンピュータ将棋チームが2連勝を返し、五分に戻しています。

ponanzaの初手▲7八金で始まった本局は、第三局に続いて15手目▲3四飛の横歩取り。対する村山七段は、プロの公式戦では数少ない△8八角成▲同銀△7六飛の相横歩取りを選び、対コンピュータで有力とされる中盤の短い展開に持ち込む作戦か、もしくは事前に用意した手順への誘導か、と思われました。しかし、いかにも秘策、という手順を披露したのは、これを▲7七歩△7四飛▲3六飛という手順で返したponanzaの方。続く△3三桂に▲2六飛△2五歩▲5六飛△4二銀▲8六飛と、△4二銀をわざと指させる手損作戦を採用しました。

いわゆる壁銀の形で▲7七歩と受けながら△7四飛に▲同飛とせず駒組を続ける指し方は奇異に見えましたが、その後の▲8六飛に△8二歩なら▲8三歩から激しく攻め、その場合に先手の壁銀の固い形が生き、後に▲2一飛と打ち込み△4二銀が悪手になる展開が考えられました。村山七段はそれを察知してか△8二歩でなく△8四歩と受け、ponanzaに▲8三角から馬を作らせる作戦を選択。

以下、先手の馬の力に後手が手得で対抗する展開になりましたが、ponanzaが馬の力を生かした攻めで優勢に。この後69手目▲4六桂をきっかけに、先後双方の多数の駒に当たりがかかる激しい局面になりましたが、ponanzaは最後まで妥協しない指し手を続け、前局やねうら王に続く完勝。

最終第五局は4月11日(土)、▲阿久津主税八段 – △AWAKE戦が東京将棋会館にて行われます。最後にプロ棋士が意地を見せてチーム初の勝ち越しとなるか、それとも、将棋電王戦FINALをもってコンピュータ将棋が人類を超越したことが証明された、と宣言される結果となるか。最高の展開でクライマックスを迎えます。

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将棋電王戦FINAL第3局はやねうら王勝ちコンピュータ将棋チーム初勝利

本日五稜郭にて行われた将棋電王戦FINAL第3局、▲稲葉陽七段 – △やねうら王の一戦は、116手でやねうら王が勝ちました。団体戦としてはコンピュータ将棋チームが今シリーズ初勝利で1勝2敗とし、プロ棋士チームの勝ち越し決定はお預けとなりました。

本局の戦型は、【電王戦FINALへの道】#28の練習対局で現れたのと同じく、先手稲葉七段の横歩取りに対してやねうら王の3三桂型。練習対局と同じく▲9七角と上がって△8九飛成を誘い、▲8八角と龍を閉じ込めて優位に立つ策に出るかと思われましたが、稲葉七段はこれを見送り、普通の中住まいの形に構えました。そして昼食休憩後、稲葉七段の47手目▲2七歩が強気な一手で一気に激しい戦いに突入。局後の記者会見にて、やねうら王の開発者の磯崎元洋さんは、電王手さんの動作時間があるため練習対局のときより考慮時間が長くなり、やねうら王の序盤の指し手が変化した、との見解を示しました。対する稲葉七段は、△8九飛成を許すと後手に暴れる手順が生じる形であったため▲9七角を断念したこと、また42手目△1三角の形が後手にとって非効率とみて決戦に踏み切ったことを、局後の記者会見で明かしました。

稲葉七段の注文で開戦となったにもかかわらず、後手のやねうら王は駒損ながら飛を成り込んだ後、角を交換、66手目△6六桂の王手と好調な攻め。大盤解説会場では夕刻に早くもYSSが-2000を超える評価値、すなわち後手勝勢を示しました。稲葉七段は、駒得がみるみる大きな駒損に変わっていく代償に入玉を目指すことに。

2年前の第2回電王戦第4局の​塚田泰明九段 – Puel​la αが思い出される局面となり、勝敗はコンピュータ将棋の苦手な入玉模様の指し方にかかってきました。やねうら王が先手玉を逃がせば引分、もしくは逆転負けも考えられる展開になりましたが、114手目の△2六銀が鋭い捨て駒で、先手玉を下段に引き戻して寄せ切りました。引き戻される前に入玉を確定させる指し方を先手が選べたようにも見受けられましたが、稲葉七段は駒損が大きすぎるため入玉を急いでも捕まえられると判断し断念したとのこと。今日のやねうら王は、最後までコンピュータ将棋の弱点を突く隙を与えなかったようです。

来週4月4日(土)の第4局は、▲ponanza – △村山慈明七段戦が奈良・薬師寺で行われます。団体戦としては依然としてプロ棋士チームを追いかける立場のコンピュータ将棋チームですが、準電王・電王がともに勝てば、将棋電王戦FINALもまたコンピュータ将棋チームの勝ち越しで終わることになります。

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将棋電王戦FINAL第2局は永瀬六段勝ちプロ棋士チーム連勝、バグによる終局

本日高知城にて行われた将棋電王戦FINAL第2局、▲Selene – △永瀬拓矢六段の一戦は、89手目のSeleneの指し手が王手放置の反則、と裁定され、永瀬六段の勝ちとなりました。団体戦としては、プロ棋士チームの2勝0敗となっています。

本局は先手のSeleneが17手目まで角道を開けない居飛車で力戦型に誘導すると、後手の永瀬六段も居飛車で角交換の後に玉を固く囲う陣形を選択。Seleneが右玉に囲ったことで戦いのきっかけが生じにくい形となり、永瀬六段が公式戦で千日手の多い棋士であること、本局の前のインタビューでも千日手を辞さない意志表示をしていたことから、膠着状態のまま千日手となる予感が漂う展開となりました。

しかし48手目△7三桂に対して、これを目標にSeleneは▲2四歩から1歩を持駒にして▲7五歩と先攻し激しい戦いに。そして難解な終盤戦に突入。大盤解説場に表示されていたやねうら王の評価値は先手Seleneの優勢を示していたのですが…。

なんと、永瀬六段の88手目△2七同角不成を指したところでSeleneにトラブル発生。角不成を正常に処理できなかったらしく、自らの負けを宣言して対局を終えてしまいました。局後の記者会見によれば、Seleneが王手の△2七同角不成を放置して▲2二銀と指してしまい、将棋所の反則チェック機能によって負けとなったとのこと。その場で協議が行われ、王手放置により永瀬六段の反則勝ち、と裁定されました。

裁定の直後、永瀬六段ニコニコ生放送の番組に登場し、Seleneが角不成を正常に処理できないことを事前の対策で知っていたことを明かすとともに、△2七同角不成以降の対局が続いた場合の自らの勝ち手順を解説し、不具合が未修正でも修正済でも勝ち、と見越して△2七同角不成と指したことを明かしました。なお、飛、角、歩の不成は打歩詰が発生しうる稀な局面でのみ意味があり、この角不成は打歩詰とは関係ありませんでしたが、対コンピュータ将棋では不成によって相手の予測読みを外して余計に考慮時間を消費させる、などの効果が生じることがあります。

Seleneにとっては残念な結末となってしまいましたが、終盤は優勢と読んでいたようで、永瀬六段に読み負けていたのは確かのようです。△2七同角不成の後、▲同玉△1七香成▲2六玉△1四桂▲同と△同銀▲1五歩△同銀…以下の長手数の寄せを読み切ることがコンピュータ将棋にとって意外に難しいらしく、先週の斎藤慎太郎五段 – Apery戦に続き、コンピュータ将棋の弱点が明らかになった、と言えるのかもしれません。上記の詳しい手順や説明は、ニコニコ生放送の番組の終盤戦、および局後の解説などをご覧ください。

人間がコンピュータに抜かれる過程の最後、と見る向きも多かった将棋電王戦FINALですが、電王戦シリーズでは初めてプロ棋士チームの2勝、それに2戦で到達し、これまでとはまったく異なる展開となっています。コンピュータ将棋チームは残り3局がすべて負け越しへのカド番となり、気の早い巷間では「”FINAL” が撤回されるのでは」という期待の声も聞こえます。来週3月28日(土)の第3局、▲稲葉陽七段 – △やねうら王戦の舞台の函館・五稜郭が、団体戦の決戦の地となるかもしれません。

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将棋電王戦FINAL開幕、斎藤五段勝ちプロ棋士チーム先勝

本日3月14日(土)、将棋電王戦FINALが開幕。二条城で行われた第1局斎藤慎太郎五段Apery戦は斎藤五段が115手で勝ち、団体戦としてはプロ棋士チームが先勝しました。

戦型は先手斎藤五段の居飛車に対し後手Aperyのクラシック(角道を止める)四間飛車。序盤からAperyが一手ごとに時間を費やしてスローペースで進んでいましたが、斎藤五段が23手目▲6六銀と上がってAperyの26手目△4五歩を誘い、すぐに▲5七銀と戻って角交換を挑み予想外に早く開戦。対するAperyが「来るなら来い」とばかりに28手目△6五銀と出たのが強気に過ぎたようで、斎藤五段が▲3三角成~▲2四歩と攻め飛車先を突破、さらに▲2一飛成~▲6一龍と金を取って駒得する大きな戦果を手にしました。その後は斎藤五段がわずかな優勢を徐々に拡大し、波乱を思わせる局面を一度も出現させることなく後手玉を攻略しました。

Aperyの△6五銀は見るからに危険な一手でしたが、先手にだけ飛成を許しても悪くない、というのが開戦当初のAperyの読みだったようです。これは解説会場で評価値を披露していた習甦など他のコンピュータ将棋も同様の判断をしていたようです。現代のコンピュータ将棋の課題として、正しく評価できない局面が突きつけられたのかもしれません。

今回、コンピュータ将棋側の駒の操作を担当する電王手さんは、昨年の電王手くんからさらに進化したロボットアーム。昨年の吸着方式から駒をつかんで移動する方式に変わり、盤側の補助器具に頼ることなく自らの手の中で駒を成る動作をこなし、最後は神妙に投了の意志表示を行っていました。

過去いずれもコンピュータ将棋側の勝ち越しで終わっていた電王戦、ゆえに “FINAL” と銘打たれている今回の戦いですが、昨年の豊島将之七段以来3戦ぶりのプロ棋士の勝利、また阿部光瑠四段(現五段)以来2年ぶりにプロ棋士チームの団体戦先勝で始まり、一層大きな盛り上がりを見せています。結果はともかく注目を浴びるのはコンピュータ将棋の開発者陣も望むところ。来週3月21日(土)の第2局高知城で行われる▲Selene–△永瀬拓矢六段戦が、ますます楽しみです。

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あすから将棋電王戦FINAL

本当にけじめの戦いとなるのでしょうか。将棋電王戦FINALが明日、京都で開幕します。あいにく、第一局当協会3月例会・総会と重なってしまいました。

第一局2015年3月14日): ▲斎藤慎太郎五段 – △Apery 対局場 二条城

第二局同3月21日): ▲Selene – △永瀬拓矢六段 対局場 高知城

第三局同3月28日): ▲稲葉陽七段 – △やねうら王 対局場 五稜郭

第四局同4月4日): ▲ponanza – △村山慈明七段 対局場 薬師寺

第五局同4月11日): ▲阿久津主税八段 – △AWAKE 対局場 東京将棋会館

直前まで対局場の発表がありませんでしたが、上記のとおり、前回同様に日本列島を縦断して行われます。

昨年末から毎日新しい動画が公開されている、電王戦FINALへの道では、公式戦で高勝率を誇る5人のプロ棋士チームの秘策の一端が伺える場面もあり、過去3回すべて勝ち越しているコンピュータ将棋チームも今度こそは一筋縄ではいかないかも、と思わせます。しかしコンピュータ将棋も前回からさらに容赦のないレベルアップを果たしており、本当に付け入る隙があるのか? FINALと銘打った5局が終わったらどうなってしまうのか? 人間とコンピュータの新たな関係が始まるのか? …等々、想像と妄想が広がる一方、予断を許さない勝負であることを実感させられます。

上記リンクから、ニコニコ生放送の視聴もしくはタイムシフト予約のページに飛ぶことができます。進化した電王手さんも登場し、今や日本一注目を集めるエンターテインメント技術大戦となった将棋電王戦、FINALは間もなくです。

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