Archive for 将棋

ゲームプログラミングワークショップ2014 参加申込〆切間近

第18回ゲームプログラミングワークショップ 2014 (GPW-14)が、昨年と同時期の11月7日(金)~9日(日)に開催されます。参加申込を今月初めから受け付けており、10月30日(木)が申込〆切(参加費の振込も)となります。金曜日にお仕事のある方はお休みのご手配を。

今回もプログラム中にあるようにGPW杯コンピュータ将棋大会2014を開催します。今回のルールは持時間10分、切れたら1手10秒の秒読みとなります。昨年から導入された秒読みルールを採用しますが、時間が昨年とは異なりますのでご注意ください。詳しくは開催のお知らせをごらんください。

上記のコンピュータ将棋大会のほか、GPW杯フリースタイル将棋大会、GPW杯コンピュータ囲碁大会(9路盤/13路盤)、GPW杯デジタルカーリング大会が開催される予定です。フリースタイル将棋大会はいわゆるアドバンスト将棋、すなわち堂々とコンピュータの力を使える、事実上「なんでもあり」の将棋大会。デジタルカーリング大会ロボカップシミュレーションリーグのカーリング版といえるゲームですが、人間の参加も可能。恒例の将棋、囲碁に加えて新たな2競技がGPW杯として開催されるようになり、箱根の秋の夜長はいよいよ体力勝負になってきた感じです。

本題のプログラム (変更の可能性あり)も多彩な内容の研究発表のほか、招待講演2件が今年も催されます。2件は「シリアスゲーム論」と「コンピュータシャンチー(中国象棋)」です。

多くのご参加を楽しみにしております。

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将棋電王戦、次回がFINAL

8月29日、「将棋電王戦に関する記者発表会2014」が行われ、その模様がニコニコ生放送にて中継されました(予約可能な会員のみ録画映像を視聴可能)。2015年3月~4月、今年の第3回に続き将棋電王戦が開催されることが発表されましたが、次回が将棋電王戦FINAL、すなわち、現行フォーマットの将棋電王戦が来春で最後になることが明らかにされました。

代わって、電王戦のブランド名は電王戦タッグマッチに存続されて昨年に続き今年も行われます。このタッグマッチは2016年から、将棋界の2大タイトルである竜王戦名人戦に次ぐ賞金規模の棋戦として毎年開催されることになるようです。すなわち、プロ棋士にとってのコンピュータ将棋が敵から味方に変わり、コンピュータ将棋がその技術を使ってプロ棋士に高額賞金を獲得させる、という別の役割が期待されることになります。高い貢献が認められればコンピュータ将棋開発者にも高額な分け前があるかも? 楽しみですね。

今年の電王戦タッグマッチ2014昨年の5チームのトーナメントから12チームに大幅拡大されて3日間にわたり開催され、この模様もニコニコ生放送で中継されます。

将棋電王戦FINALへの出場棋士は10月12日、電王戦タッグマッチ2014の最終日に発表されます。タイトルホルダーの出場はないそうですが、20代~30代前半で勝率6割4分~5分以上の高勝率棋士が出揃う予定とのことで、タイトルホルダーよりも手ごわい相手となるかもしれません。

将棋電王戦FINALのルールは、第3回電王戦と変わらないようです。現在出場者募集中の第2回将棋電王トーナメント上位5チームが将棋電王戦FINALのコンピュータ将棋側の出場者となり、両方で全出場者共通のハードウェアを使用しなければなりません。また将棋電王戦FINAL出場棋士は、対戦するコンピュータ将棋と同一のハード・ソフト環境で事前に練習対局する機会が得られます。昨年、当ブログにて、

特に事前練習の機会が保証されていますので、多数の練習対局を重ねてコンピュータ将棋に勝つ手順を見つけておいて、それを本番で忠実にリプレイすることができれば、今度はプロ棋士チームにも大いに勝機があるのではないでしょうか。

と書きましたが、それが容易に実行できないことが第3回電王戦で示されましたので、それを踏まえてのコンピュータ将棋対策技術の進歩が見られるのか、注目されます。そして勿論、最大の注目点は、コンピュータ将棋が第3回電王戦をさらに上回る情け容赦のない強さを将棋電王戦FINALで見せてくれるのかどうか、ですね。

さて、過去3回の将棋電王戦は、団体戦としてコンピュータ将棋チームの3連勝(第1回は1局だけではありますが…)、個別対局としてもコンピュータ将棋の8勝2敗1分となっており、次回が最後となれば2つの意味でコンピュータ将棋の勝ち越しが確定、ということになります。将棋電王戦の名は、コンピュータ将棋の技術がプロ級に進歩したことを証明したものとして、永く歴史に残るでしょう。

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情報処理Vol.55 No.8「第3回将棋電王戦を振り返って」

情報処理 2014年08月号


ひと月遅れになってしまいましたが、情報処理学会会誌2014年08月号に掲載された11ページ記事「第3回将棋電王戦を振り返って」を紹介します。記事には、第3局に勝利した豊島将之七段による自戦解説と、MVPを獲得した習甦の開発者の竹内章さんによる非線形評価関数の改良についての技術解説があります。解説中、豊島七段自身をはじめとするプロ棋士や電王戦の観戦者の意見は、コンピュータ将棋への一般的な評価とはひと味異なるものが多く、コンピュータ将棋開発者や将棋ファンにとっても示唆に富んでいるといえます。

加えて、第3回将棋電王戦や今期の名人戦の結果など最新に近いデータを反映させ回帰分析によってプロ棋士とコンピュータ将棋の強さを比較推定した記事では、人のトップとコンピュータの実力がいよいよ接近していることが数値で示され、「人間のトップがコンピュータに勝つのはまさに今しかない」と結論づけられています。

なお、本記事の紹介がびと月遅れてしまったため、すでに09月号も発行されています。そちらには第24回世界コンピュータ将棋選手権の紹介記事はなさそうですので、こちらは10月号を待つことになりそうです。

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新刊紹介: ルポ 電王戦

ルポ 電王戦―人間 vs. コンピュータの真実 (NHK出版新書 436)

本書の著者、松本博文さんは、コンピュータ将棋選手権ネット中継を長年にわたって担当し、世界コンピュータ将棋選手権の模様をリアルタイムで伝えてきた人です。前世紀からいち早く「ネット中継」というスタイルを確立した将棋観戦記者の先駆けとしての経験を足掛かりに、コンピュータ将棋史の決定的な場面をこのブログで伝え、そしてそれらが本書にも記されています。加えて、あるときは日本将棋連盟のインサイダー、あるときは2年続けて「100万円チャレンジ」にてコンピュータ将棋をあと一歩まで追い詰めたプレイヤー、すなわち本書の重要人物としてたびたび著者自身が登場して読者を驚かせます。

しかし本書は「見聞録」や「漫遊記」ではなく、第24回世界コンピュータ将棋選手権のドラマからわずかひと月の興奮を伝える、おびただしい数の登場人物たちが怒涛のごとく描かれた「ルポ」です。特にコンピュータ将棋の開発者やその周囲を入念に取材し、技術的な記述も正確です。一方で、大山康晴、升田幸三の昭和の名棋士が遺した言葉を引くなど、コンピュータ将棋が半世紀近く、いかにしてプロ棋士と電王戦を争えるまでに強くなり続けたか、がプロ棋士や著名人の目を通して立体的にわかるお得な1冊にもなっています。そして、渡辺明竜王(当時)対Bonanza清水市代女流王将(当時)対あから2010の対戦を経て、多くの人々が抱いた百人百様の思いを束ねた米長邦雄永世棋聖の決断に導かれ、第1回第2回第3回の電王戦にて、計11局の過酷な、ゆえに歴史的なプロとコンピュータの戦いが繰り広げられます。

コンピュータ将棋選手権ネット中継では、著者は写真と局面図をふんだんに使って世界コンピュータ将棋選手権をリアルに伝えていますが、本書ではあえてそれらを封印して文字だけで全頁を書き切っています。それだけに立ち止まるきっかけがないまま一気に読み進めてしまうこと請け合い。コンピュータ将棋の開発者や熱心なウォッチャーの皆さんなら、場面が次々に脳裏に浮かんですらすらと読めるでしょう。人類とコンピュータの対戦はいかにあるべきか? あとがきの『本書は…』の筆者による総括を目にしたとき、誰もがそのテーマを語るにふさわしい論客となっているでしょう。

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将棋世界7月号に第24回世界コンピュータ将棋選手権と第3回電王戦記事

将棋世界 2014年 07月号 [雑誌]

月刊将棋世界2014年7月号にて、第24回世界コンピュータ将棋選手権の特集記事と、第3回電王戦の振り返り記事が、それぞれ10ページずつ掲載されています。前者は鈴木健二さん、後者は北野新太さんの執筆。

第24回世界コンピュータ将棋選手権特集記事『新星「Apery」大逆転で初優勝!!』は、全3日間の模様を余すところなく伝えていますが、今回は決勝リーグで2ゲーム差が覆る大きな逆転があったためか、最終日、特に後半戦の優勝決定までの模様に多くの誌面が割かれています。局面つき解説は決勝リーグから10局。現地大盤解説会での勝又六段遠山五段ほかの解説の模様、開発者へのインタビューに基づく技術解説も交えて熱戦の模様を伝えています。

特別寄稿『敗れてもなお』は、第3回電王戦に出場した5人の棋士全員へのインタビュー内容をもとに、対局前の心境と、棋士チームの1勝4敗という結果を受けての総括がプロ棋士の立場からつづられています。「事前貸し出しルールを活かしてもっと端的にコンピュータ将棋の弱点を突く戦略を採るべきだったのでは?」という疑問に対する答え、前回との微妙な雰囲気の違いは、コンピュータ将棋が前回からさらに進化したこと、そして今後の将棋電王戦がどうなっていくのか、など、コンピュータ将棋関係者にとっても関心を寄せずにはいられない論点を思わせられます。

このほか、飯島七段の連載講座では、第3回電王戦にて豊島七段に対してYSSが指した△6二玉について詳しく解説され、『ぼくはこうして強くなった』では森下九段第3回電王戦への出場について直接語っています。『ニコニコ超会議3「全員主役。」』では、コンピュータ将棋や電王手くんが登場した企画について書かれ…という具合に、将棋の話題として完全にコンピュータ将棋が定着しています。

将棋世界は全国の書店やネットショップで購入できます。電子書籍については数通りの形式で購入できますので、こちらの「電子版のご案内」の欄から購入先をお選びください(本記事冒頭の画像をたどるとアマゾン キンドル版が購入できます)。将棋世界の前回までの記事紹介ではiPad用の電子書籍アプリを紹介していましたが、こちらは新刊の発行が終了しておりこちらで購入することはできません。対象端末やアプリが限定されなくなり、パソコンやiPhone/iPad、Android、キンドルなど多くの端末で購読可能になりましたが、記事内で駒が動く機能はなくなりました。通常書籍版より安価で付録なし、という様式は変わらないようです。

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