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第2回電王戦開幕、対現役プロ初勝利はお預け

第2回電王戦第1局が本日行われ、113手で先手番の阿部光瑠(こうる)四段習甦を降しました。プロ棋士チームとコンピュータ将棋チームの対抗戦としてはプロ棋士チームの1勝0敗となっています。

阿部四段の完勝といえる内容でした。後手番の習甦は先に攻撃を仕掛けたものの、51手目▲9八玉と「米長玉」と呼ばれる形にかわされた形を攻略しきれず、69手目▲7八歩と受けられて攻めが続かなくなってしまいました。以下は習甦も粘ったものの阿部四段の手堅い攻めに屈しました。

習甦の仕掛けは、人間の目から見ると「やや無理」と思われる指し方でした。局後の記者会見で阿部四段は、習甦が仕掛けたのとほぼ同じ局面が事前の練習で現れていたことを認めました。その攻めに備えて早めに▲9五歩と突いて将来の自玉の逃げ道を作っておき、その手を活かす形にして習甦の攻めをうまくかわすなど、人間の大局観と巧妙な作戦、周到さが光りました。

2007年の渡辺明竜王vsボナンザ以来6年ぶりの現役正棋士との公式戦はまたしても棋士の勝利となり、コンピュータ将棋の対現役プロ初勝利はなりませんでした。第2局以降に期待がかかります。習甦には残念な完敗でしたが、現在のコンピュータ将棋の課題が浮き彫りになった点は成果だったといえるでしょう。本局の習甦の攻めを無理とみて避けられるように、コンピュータ将棋の進歩が求められている、といえそうです。もちろん、その技術は容易なことでは実現しないでしょう。

今回の結果は、マスメディアでも広く報じられています(NHK朝日新聞など)。1人目のプロ棋士がお手本のような勝ち方を披露したことで、明らかな進歩を遂げているコンピュータ将棋をも退けるほどプロは強い、という認識を広めたことが盛り上がりに繋がっているようです。ニコニコ生放送中に流れた視聴者のコメントもプロ棋士への声援が目立ちました。コンピュータ将棋にとっては試練の立ち上がりとなったものの、第2局以降がますます楽しみです。

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第2回電王戦、まもなく開幕

プロ棋士とコンピュータ将棋の団体戦、第2回電王戦が、いよいよ今週末、開幕します。

ここまで数々の関連イベントも行われ、注目は高まっています。先日お伝えした勝てたら100万円!ニコニコ本社で誰でもトライアルマッチ」が前哨戦として行われたほか、こちらで紹介されている特別番組もniconicoで放送されました。本日も、人気将棋マンガの3月のライオン
とのコラボ番組が放送予定です。このほか、人類vsコンピュータ映画特集も電王戦特集として多数の番組がラインナップされ、これからも放送が予定されています。日本を代表する動画配信サイトであるniconicoにとっても史上空前のイベントといって差し支えないでしょう。

コンピュータ将棋から見ると、プロ棋士との公式対戦は第1回電王戦以来1年2ヶ月ぶりですが、現役正棋士との公式戦は2007年の渡辺明竜王vsボナンザ以来6年ぶりです。この対局は戦前の期待以上の熱戦が繰り広げられた末にボナンザの惜敗、という結果でした。今回、6年の月日を経て当時とは比べ物にならないほど強くなっているコンピュータ将棋が今回は有利ではないか、という下馬評が優勢のようです。しかし、トライアルマッチでは100万円を獲得した挑戦者が3人誕生したほか、アンチコンピュータ戦略を実行して100万円にあと一歩まで近づいた挑戦者が多数現れており、これを見ると、周到な対策があればプロ棋士も充分戦えるのでは、と好勝負を予感させます。トライアルマッチは持時間が15分しかない中での対局(切れたら秒読み)でしたが、第2回電王戦では4時間の持時間(分単位未満切り捨て)があり、トライアルマッチで挑戦者がチャンスを逃したような局面でもじっくり考えられる分、人間側の勝機が高まるものと思われます。

注目のマッチアップを以下に再掲します。第1局は明後日、3月23日(土)です。ニコファーレにて豪華解説陣による大盤解説会も行われます。第1回電王戦のときよりはるかに広い会場での解説ですので、お誘い合わせの上出かけてみられてはいかがでしょうか。

第一局2013年3月23日): ▲阿部光瑠四段 – △習甦

第二局同3月30日): ▲ponanza – △佐藤慎一四段

第三局同4月6日): ▲船江恒平五段 – △ツツカナ

第四局同4月13日): ▲Puella α – △塚田泰明九段

第五局同4月20日): ▲三浦弘行八段 – △GPS将棋

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特別企画「アドバンスド将棋は最強コンピュータ将棋に勝てるか?」

直前のお知らせになってしまい申し訳ありませんが、本日3月18日午後より、電気通信大学エンターテイメントと認知科学研究ステーションの特別企画「アドバンスド将棋は最強コンピュータ将棋に勝てるか?」と題して、コンピュータ将棋の対局が2局行われます。

電王戦も今週末には第2回が始まり、人間のエキスパートプレーヤーとコンピュータ将棋の対局もすっかりおなじみになりましたが、今回の企画では人間側もコンピュータ将棋を使用することができます。詳しくはサイトの情報をご覧ください。対局者のお二人は一昨年にも同団体の企画でコンピュータ将棋と対決しているアマチュア強豪ですが、コンピュータ将棋の特徴に精通しているお二人がどのような形でコンピュータ将棋の助けを借りるか、何をコンピュータ将棋の強みと考え、どんな役割を与えるか、が注目点といえるでしょう。

平日のイベントではありますが、動画中継が行われる予定とのことですので、お仕事や学業がある方もアクセスできればぜひご覧ください。

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アンチコンピュータ戦略との戦い

niconicoにて「人類vs最強将棋ソフト 第2回将棋電王戦開催記念イベント | 勝てたら100万円!ニコニコ本社で誰でもトライアルマッチ」という企画が始まり、本日その初日が行われインターネット生放送されました。9人のアマチュア強豪が人類代表として挑んだ初日の結果は、コンピュータ将棋代表のGPS将棋が9戦全勝。これは、プロゴルフトーナメントのホールインワン賞並の賞金額が人類勝者側に授与されることを思えば順当な結果でしたが、うち第4局は人類側が一時優勢を築き、早くも100万円獲得か、と観客を大いに沸かせました。

そのGPS将棋を追いつめたご本人のブログ記事でポイント解説が読めます。詳しくはそちらをお読みいただきたいのですが、ひとことで言えば、GPS将棋はまんまと人類の罠(アンチコンピュータ戦略)に嵌められ、駒損してしまったのです。

第22回世界コンピュータ将棋選手権を制し、第2回電王戦ではトップレベルのプロ棋士との対戦が控えているGPS将棋が、CPUコア数が少なかったとはいえ、信じられないような悪手を指してしまった理由は何でしょうか? 考えられる理由としては、(1)思考時間が短かったため読みが浅くなり、打ち込んだ角を捕獲される局面まで読めなかった。(2)駒損しても敵陣を乱して攻めているので優勢と判断した。等があります。この局面の場合、10手程度先を読めば駒損が判明すると思われ、これは数秒以内で読める範囲と思われますので、主な理由は(2)と推定されます。

しかし、駒損した後の手順をさらに深く読めなかったために、駒損による戦力不足によっていずれ人類側に態勢を立て直されてしまうことが判らなかった、と考えると、やはり読みが足りなかった、と推定できそうです。人間のエキスパートプレーヤーの場合、この種の攻めは一時的な勢いがあっても長続きしない、という判断を、読みだけでなく知識や経験である程度補えるので、たとえコンピュータより深く読めなくてもこのような無謀な手を避けられるのですが、コンピュータ将棋にはまだその部分に課題がある、といえるでしょう。対する人類には、そのような敵の弱点を察知し、敵を陥れようとする英知があるのです。

コンピュータ将棋の弱点が広く知られてしまい、次の2日目には弱点をさらに効果的に突こうとする猛者が多数GPS将棋に挑んでくると予想されますが、これはコンピュータ将棋にとってチャンスでもあります。コンピュータ将棋が次に克服すべき課題がこのトライアルマッチシリーズで明らかにされれば、格好の研究テーマになり、それはいずれコンピュータ将棋をもっと強くするでしょう。否、GPS将棋は次の週末までに対策を立ててくるかもしれず、その成果は間もなく見られるかもしれません。トライアルマッチシリーズ初日を観戦した方もそうでない方も、2日目以降にぜひ注目していただきたいと思います。

ところで、番組放送中、コンピュータが動作停止してしまい、ソフトを再起動させる、という場面が多数見られたことには驚かれた方も多かったと思います。これは企画の性質上認められていたコンピュータ将棋救済策と思われますが、世界コンピュータ将棋選手権ではこのような救済策は実施されません。世界コンピュータ将棋選手権では、コンピュータが動作停止したとみられる状況になっても、コンピュータに対して操作を行うことは認められていませんので、多くは停止したまま時間切れ負け、という扱いになります。世界コンピュータ将棋選手権に出場される開発者の皆さんには、頻繁に動作停止することのないよう慎重に開発していただくようお願いいたします。以上、ご参考までに。

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第23回世界コンピュータ将棋選手権 参加者募集中

あけましておめでとうございます。2013年もコンピュータ将棋をよろしくお願いいたします。

さて、当協会では、例年どおり昨年末に第23回世界コンピュータ将棋選手権の参加者募集を開始いたしました。申込受付は今月末までです。

昨年から変わった点のうち主なものを簡単に列挙しておきます。

  • 今回の会場は、一昨年の第21回選手権を開催した早稲田大学国際会議場にて行われます。国際会議場は早稲田キャンパスにあります。
  • 開催日時は5月3日(金、祝)〜5日(日、祝)の3連休中です(日付は昨年と同じです)。
  • ライブラリ使用プログラムの予選通過数制限は廃止されます。1次・2次予選ともに、使用ライブラリとは無関係に上位から通過枠数のチームが翌日に進出できます。
  • アピール文書の提出が必須となります。
  • その他の変更点については、第23回世界コンピュータ将棋選手権 参加者募集のお知らせの「前回に参加された方へ」以降をご覧ください。

上記のとおり、ライブラリ使用によるルール用のハンディキャップが廃止される一方、アピール文書では各チームの独自性を明示していただくことになりました。世界コンピュータ将棋選手権は、技術の普及を推奨し進歩に貢献しつつ、独自の価値を生まない技術の複製によって進歩の可能性が摘み取られないよう、現在も制度を検討しています。

多くのご参加のお申し込みをお待ちしております。

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