Archive for 将棋

「コンピュータは七冠の夢を見るか?」で「あから」に勝つ?

将棋世界 2010年 11月号 [雑誌]


月刊将棋世界11月号の「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第10回にて、コンピュータ将棋に勝つための戦略について論じられています。いつもと逆の主旨になっているともいえますが、「将棋を指す人にとってわかりやすい解説」という本連載の特長に適したテーマである、ともいえそうです。

ここには、対人戦で採用することがほとんど考えられないような、かなり徹底した「コンピュータシフト」といえる対策も書かれています。特定の戦形を推奨しているというわけではありませんが、かなりあからさまにコンピュータ将棋の弱点を突こうとする内容で、実践するには抵抗感の強い部分もあります。しかし、それほど徹底しなければ、相当強い人間であってもコンピュータ将棋を打ち破ることは至難、という現実を反映した内容になっています。

なんといっても今回は、 「清水市代女流王将vs.あから2010」の直前企画です。そのため、もはやまったく歯が立たないと思っていたご家庭のパソコン将棋ソフトの最強レベルに久々に勝っていい気分になろう、という身近な話題では終わっていません。当然、あから2010に打ち勝つための戦術を論じています。そのために、コンピュータ将棋の事情に詳しい2人の全国レベルのアマチュア強豪にインタビューし、あから2010との戦いに臨むにあたって、事前研究と準備、あから2010の特徴、実戦の展開に応じた戦術、そして対局後の動向など、詳細にわたって力説しています。

清水女流王将vs.あから2010」は、会場の東京大学にて大盤解説が行われ(対局室は別室)、またネット中継も予定されています(ライブ中継は有料会員向けのみ)。この記事を踏まえ、コンピュータの急所をどう突くか、清水女流王将になったつもりで熟考しながら観戦すれば、熱戦にさらに力がこもるのではないでしょうか。

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コンピュータオリンピアード閉幕、将棋部門は激指が制す

少し時間が経ってしまいましたが、数々の思考ゲームでコンピュータたちが激戦を繰り広げたコ ンピュータオリンピアード2010金沢大会は、10月2日に閉幕しました。ネット中継を楽しまれた方も多いのではないかと思います。

日程後半に行われた将棋部門では、今年の第20回を含め世界コンピュータ将棋選手権4度の優勝を誇る激指が8勝全勝で金メダル、賞金1,000ユーロを獲得しました。続いて習甦が7勝1敗で銀メダルと500ユーロ、GPS将棋が6勝2敗で銅メダルと300ユーロ、Bonanzaが200ユーロをそれぞれ獲得しました。

将棋に先行して行われた5五将棋部門では、128分の1里眼が金メダルを獲得しました。

将棋以外で今回大きな話題になったのは、やはり日本棋院の藤沢里菜プロ初段と19路盤囲碁部門を制したEricaによるエキシビション対局が行われたことでしょう。Ericaが6子を置いての対局は序盤からEricaにミスが目立ち、12歳になったばかりの藤沢初段の完勝となりました。将棋と違い、囲碁はまだ人間との実力差がかなりあるようです。

コ ンピュータオリンピアード2010金沢大会の公式ページにはまだ結果発表がないようですが、北陸先端技術大学院大学ニュースに取り上げられています。また、激指の開発者の鶴岡慶雅さんによる英語版レポートが公開されています。

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コンピュータオリンピアード2010金沢、開幕

何度かお伝えしたとおり、コ ンピュータオリンピアード2010金沢大会が本日9月24日(金)、しいのき迎賓館にて開幕します(競技は2日目から)。10月2日に閉幕する予定のオリンピアードの最後の3日間、将棋と囲碁の一部の競技とイベントについては、ネット中継が行われることが、開幕直前になって発表されました。現地に行かれない方にも、一部の模様をリアルタイムで見ることができそうです。

同時に行われる、ゲーム情報学国際会議、コンピュータチェスの各クラスの世界選手権を含めたイベントスケジュールも、直前になって確定したようです。将棋の各クラスの競技は、日程後半に予定されています。

一部の競技のルールなども直前になるまで判明しなかったようで、非常におおらかな雰囲気ですが、ともあれ、日本ではまだ行われたことのない競技、コンピュータゲームの技術の進歩がどのような戦いを見せてくれるか、必見です。

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「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第9回は合議アルゴリズム

将棋世界 2010年 10月号 [雑誌]


月刊将棋世界10月号の「コンピュータは七冠の夢を見るか?」第9回は、前回の並列処理と同様、複数のコンピュータ(CPU)を活用するもうひとつの方法、合議アルゴリズムを採り上げています。

コンピュータ将棋において、合議アルゴリズムは最近2年間くらいの新しいテーマですが、はっきりいって仕組みは非常に簡単。しかし何故それで成果が出るのかは、まだよくわかっていません。特に「楽観的合議」については、近年中には恐らく謎が解けないであろうと思われます。その不思議について、記事ではいつものように具体的な局面と、コンピュータ将棋が選んだ指し手から、仮説としての考察を行っています。今回の記事でもっとも大きく取り上げられている、谷崎アマvs「文殊」の対局はなかなか見ごたえがありますので、この機会にごらんください。

来月、清水女流王将と対局する「あから2010」も合議アルゴリズムを使います。「あから2010」は大規模なクラスタコンピュータで実現されますので、激指GPS将棋BonanzaYSSの4つのソフトが合議する一方、各ソフトは並列処理によって動作する、という多階層のシステムになります。並列処理と合議をいかに組み合わせて効果を上げるか、という問題について考察するためにも、記事を一読されてはいかがでしょう。

※9月例会の会場が発表されました。詳しくは当ブログの前回記事をごらんください。

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日本初のコンピュータオリンピアード、開幕迫る

以前お知らせした第15回にして初の日本での開催となるコ ンピュータオリンピアードの開幕が20日後に迫ってまいりました。世界コンピュータ チェス選手権ゲーム情報学国際会議も併催される一大イベントは、コンピュータによる知的ゲームの世界一を競う高度な知力の戦い。北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の創立・開学20周年記念を兼ねたこの大会は、石川県金沢市のしいのき迎賓館にて行われます(JAISTでの開催ではありませんのでご注意ください)。

日程表によれば、一部のイベントを除き、競技・イベント・講演はしいのき迎賓館にて無料で観戦等ができます。競技ごとの細かな日程は未だ暫定版の発表のみとなっており、特に「その他の競技部門」には日程調整中の種目もあると思われますが、主要な種目はほぼ決まっているとみてよいでしょう。

知的ゲームの国際戦といえば、第16回アジア競技大会の囲碁部門が話題になっていますが、それに先立って行われるコ ンピュータオリンピアードは、知的競技の国際化ムードを高める一役を買うかもしれません。旅行計画を立てる時期としては余裕がないかもしれませんが、少し長めの休みが取れる方は、是非ご観戦を。

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