【電王戦】プロ棋士vsコンピュータ将棋、公式戦史上初の持将棋

第2回電王戦第4局が本日行われ、230手で塚田泰明九段Puella αとの間に持将棋が成立、規定により引き分け扱いとなりました。通算成績はコンピュータ将棋チームの2勝1敗1分となり、リードを保ち負け越しなしの状況を確保したものの、勝ち越しを決めることはできませんでした。

報道(朝日新聞読売新聞など)だけでは、持将棋が何なのかわかりにくいと思いますので、少し説明します。第2回電王戦前3局と同様に今回もコンピュータ将棋側が開戦しプロ棋士が受けて立つ展開になりましたが、今回はPuella αの攻めが成功、塚田九段は自陣の壊滅と引き換えに自玉を上部へと脱出し入玉を目指しました。圧倒的優勢ながら敵玉に脱出されて詰ますことが困難になったPuella αは攻めをあきらめ、同じように自らの玉を入玉させました。双方入玉したときにはPuella αが圧倒的な駒得を果たしており、双方入玉時の24点制による駒数計算によりPuella αの勝ちと判定されることになると思われました。しかし、ここから塚田九段が猛反撃を見せ駒損を急回復、220手過ぎに24点まで回復し、230手の時点で塚田九段が持将棋24点規定の適用を提案しました。Puella αの開発者の伊藤さんがこの提案に同意、持将棋が成立しました。第2回電王戦はプロ棋士同士の公式戦と異なり「午後4時以降の指し直しなし」の規定があるため、持将棋が最終的な結果となり、引き分けが記録されました。

プロ棋士とコンピュータ将棋との公式対局で持将棋が成立したのは史上初めて。プロ棋士同士でも滅多に生じないこの結末が議論を呼ぶことは必至ですが、「敵玉を詰ます」という勝利条件、「24点未満」の敗北条件いずれも満たされなかった以上、引き分けはやむを得ない結末といえます。Puella αにとっては圧倒的勝勢に立ちながら勝ち切れず、塚田九段にとっては大苦戦を強いられたうえに引き分けに持ち込むのがやっと、団体戦で勝ち越せないことも決まってしまった、という決着で、「痛み分け」と表現するのが妥当でしょう。とはいえ、これ以上はないと思われた第3局を上回る死闘は、社会的にも、またコンピュータ将棋の課題を露呈したという意味で研究的にも、忘れ去られることのない対局となりました。

第2回電王戦もついに残り1局。最終第5局は来週、 三浦弘行八段GPS将棋との対戦です。第5局の予告動画もすでに閲覧できます。GPS将棋が引き分け以上ならコンピュータ将棋チームの勝ち越しとなる一方、負ければ予想外の団体戦引き分けとなります。上記リンクのうち動画へのリンクはniconicoへのログインが必要ですので、会員でない方はこの機会に登録されてはいかがでしょう。第5局もこれまで通りニコファーレで大盤解説会が行われますが、第2局第3局第4局と同様にプレミアム会員は大盤解説会に無料入場できるようです。

3 Comments »

  1. 下田 said

    私としては、Puella α戦では電王戦ルールと選手権ルールの乖離を
    思い知らされましたね。

    2次予選からはルールを換えて、考慮時間1000秒の3秒将棋+
    256手双方王手無しで引き分け(つまり、入玉宣言可能な状態でも
    しなければ引き分け)でもいいような気がします。

    正直、稲庭流も非常に面白いと思うのですが、去年のGPSvsPuella αは、
    なんだかなぁと思う人も多かったと思います。

    引き分け狙い&切れ勝ち狙いのソフト(風車戦法などを指すソフト)がなんかの
    拍子で決勝行っちゃうと、それだけで、現在のルールでは、ほぼ電王戦出場
    確定するわけですから、あんまり面白くないと思うんですよ。

    で、上記ルールでも、電王戦出場を決める稲庭流は長時間ルールでやっても
    それなりにやれると思うので電王戦で戦っても面白いと思うのですよ。

    あと、256手ルールはGPS企画で適当に作られたルールのように思ったのですが、
    昨日のPuella α戦を見ると絶妙だったので面白かったです。意外と、考え抜かれた
    ルールで事前に準備されて、それをGPS企画に適用したのでしょうか?

    その辺がファンとしては気になります。

  2. 名無し said

    稲庭をやったのはプエラではなくポナンザでしょう
    それに稲庭対策をGPSほどの強豪ソフトがしていないのが問題です
    一種のデバッグですよ

  3. 下田 said

    ↑いえ、私は去年の決勝のGPSvsPuella α戦の切れ勝ちに対して言っているだけであり、
    Puellaが稲庭をしたとは言っていません。

    たとえば、今のルールだと0秒までに相手玉を取らないといけないんですよ。
    だから、持ち時間が20秒しかない時点で、50手詰があっても負けになっちゃうのが
    なんだかなぁと思うし、あの戦いは良くて持将棋だと思うんですよ。

    切れ勝ちは、24点ルールやトライルールよりもゲーム性を変えるので、稲庭のような
    トンでもない将棋がでてきてしまう。これ自体は非常に面白いのですが、電王戦
    ルールと乖離しすぎてるだろとおもうのですよ。何故なら、下手に入玉周りの評価を
    するようにも、何もせず、時間を温存した方が勝てるんだから。

    つまり、相入玉だとどんなに差があっても、時間を残した方が勝っちゃう。
    これによって、プログラマは入玉展開を評価する気が更に失せるとおもいます。
    (伊藤さんとかが、まさにそうだと思います。)

    あと、稲庭対策をしてないのは、GPSではなくGPSFishです。GPSはしてます。
    http://gps.tanaka.ecc.u-tokyo.ac.jp/gpsshogi/index.php?GPSFish

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