Archive for 将棋

コンピュータオリンピアードは慶應大日吉キャンパスで開催

追記(8/14): こちらでコンピュータ将棋の解説のUSTREAM中継が行われる予定です。コンピュータ囲碁国際会議等の中継も行われます。

8月12日〜18日に行われる、コンピュータオリンピアード2013横浜大会は、慶應義塾大学日吉キャンパス協生館に急遽会場を変更して開催されることになりました。

開催要項はこちら(PDF, ゲーム情報学研究ユニットのサイトより)をごらんください。参加者でなくても、事前申し込み等不要で無料観戦が可能です。

多数の競技中、コンピュータ将棋は16日(金)、17日(土)の2日間(午後)に開催。また開催要項にはありませんが、コンピュータ5五将棋が15日(木)午後に開催されるそうです。ほか、同会場で開催される世界コンピュータチェス選手権(および世界コンピュータチェスソフトウエア選手権)、コンピュータ囲碁(九・十三・十九路)など興味深い競技の大会が多数開催されます。

当初は、パシフィコ横浜にて多数の催し物が集結する一大イベントとなる予定でしたが、7月31日に突然の中止発表が行われ、その後多数の代替会場に分散しての開催が発表されていたものの、コンピュータオリンピアードについては情報の公示が遅れていました。慌ただしいことではありますが、ともあれ無事に開催されそうです。ご興味がおありの方は、ぜひご観戦を。

Leave a Comment

コンピュータオリンピアード、2013年は横浜開催

今年のコンピュータオリンピアード(一部資料中ではコンピュータオリンピック)は、2大会ぶり2度目の日本開催となります(2012年は開催がなかったため年次としては3年ぶり)。今年4月24日、記者会見にて国際頭脳スポーツフェスティバル2013パシフィコ横浜で開催されることが発表され、この中で行われるイベントのひとつとして国際頭脳スポーツコンピュータオリンピアードが行われることが明らかにされました。

競技種目に将棋が含まれること、世界コンピュータチェス選手権ゲーム情報学国際会議と同時開催されること、などは例年のコンピュータオリンピアードと同様ですが、今回は国際頭脳スポーツオリンピック、すなわち人間のゲーム競技会も国際頭脳スポーツフェスティバル2013の傘下で同時に行われます。予定されている競技種目は30を数え、日本では空前の規模のイベントになりそうです(ただし現時点では情報が少なく、不明点も多くあります)。

将棋を含むコンピュータオリンピアードの各競技への参加申込は、こちらで受け付けているようです。コンピュータ将棋大会については、第20回世界コンピュータチェス選手権のルール(PDF, 英語。ICGAのニュースリリースからたどることができます)に含めて書かれています。参加費等の情報が含まれています(6月30日までに参加を申し込むとアーリーエントリーの参加費優遇がありますが、その後は倍額となるようです)。

国際頭脳スポーツコンピュータオリンピアードの開催期間は、国際頭脳スポーツフェスティバル2013の日程となっている8月14日(水)~18日(日)よりも少し早く始まる12日(月)~18日(日)です(うち将棋については、16日(金)~17日(土)の2日間、予備日として18日(日)が予定されているそうです)。会場のパシフィコ横浜は毎年CEDECが行われる場所ですが、国際頭脳スポーツフェスティバル2013今年のCEDECより少し前に行われますので混同しないように注意してください。

第2回電王戦の興奮まだ冷めやらぬ昨今、またコンピュータ囲碁でも第1回電聖戦が行われた今年、この一大イベントが日本で行われるのは絶好のタイミングと思われます。何より世界的なゲームイベントの貴重な機会、是非多くの参加・観戦を。

Leave a Comment

将棋世界「電王戦」「世界コンピュータ将棋選手権」「森田さん」

将棋世界 2013年 07月号 [雑誌]

月刊将棋世界2013年7月号にて、コンピュータ将棋に関する3つの特集記事が実に計29ページにわたって掲載されています。このほかの記事中でもコンピュータ将棋の話題が多く取り上げられ、総計で30ページを優に超えています。コンピュータ将棋関係者なら今月号はぜひ読んでいただきたい号です。

ひとつ目は「船江恒平・佐藤慎一が語る電王戦 われらはかく戦った」。大川慎太郎さんが15ページにわたって、第2回電王戦を戦った佐藤慎一四段船江恒平五段へのインタビュー記事を書いています。当ブログでも前々回の記事に書いたとおり、将棋世界6月号にて第2回電王戦の全5局の内容を伝えていますが、今回は第二局第三局を深く掘り下げています。出場の決断からコンピュータ将棋との対局の準備、対局中の思考、そして戦後の心境までを2人の棋士から詳しく引き出しています。真剣勝負のさなか、コンピュータ将棋のどのような能力を警戒し、どこに勝機を見出したか、を2人の棋士が事細かに述懐していて、コンピュータ将棋の特性や課題を分析する上でも、またこれからの人間vsコンピュータの戦術研究を行う上でも、正確かつ重要な情報が得られるように思います。

ふたつ目は毎年掲載していただいている、第23回世界コンピュータ将棋選手権の紹介記事。昨年と同じく松本哲平さんの執筆10ページ。今回も個性的な参加者の技術、好局・注目局のポイント、開発者インタビューがバランスよく紹介され、また最後の優勝争いのシーンが時系列で劇的に、いささかセンチメンタルに書かれています。

みっつ目は、当ブログの前回記事にも紹介した森田和郎さんの追悼記事。森田さんの同志というべき3氏の座談会の内容が4ページにわたり掲載されています。故人の数々の業績とエピソード、そして技術進歩の系譜を知る上で必読の内容といえるでしょう。

このほか、世界コンピュータ将棋選手権ですっかりおなじみの教授勝又清和六段が「突き抜ける! 現代将棋」にて、コンピュータと入玉、およびGPS将棋が第2回電王戦で見せた新手について詳しい論考を披露しています。また、青野照市九段も「将棋時評 -棋道哀楽-」にて、第2回電王戦の感想を書いています。

将棋世界は一般書店で購入できるほか、iPad版でも最新号が購入できます。iPad版には盤面表示を動かす機能もありますのでお勧めです。

Comments (1)

森田和郎さん 1955-2012

第19回世界コンピュータ将棋選手権にて。写真左が森田和郎さん。
第19回世界コンピュータ将棋選手権にて。写真左が森田和郎さん。

月刊将棋世界2013年7月号、および週刊将棋2013年6月5日号(Twitter)にて、プログラマーの森田和郎さんの追悼記事が掲載されています。森田さんは昨年亡くなっておられましたが、事実は1年近く伏せられており、新聞各紙の訃報等も将棋世界週刊将棋を追う形となっています。

森田さんが開発し1985年に発売された森田和郎の将棋は発売当時、長期にわたって将棋ソフトの実力トップの座に君臨しました。その後森田将棋はファミリーコンピュータ・Windows等多数のプラットフォームに移植され、コンピュータ将棋ゲームソフトを一大ジャンルとして確立する役割を果たしました。技術の普及にも尽力され、コンピュータ将棋協会の設立にはメンバーとして加わりました。世界コンピュータ将棋選手権(当時はコンピュータ将棋選手権)では森田将棋第2回選手権に優勝しています。著書は、コンピュータ将棋―あなたも挑戦してみませんか (Information & Computing)、など。

森田さんの名声はコンピュータ将棋界にとどまるものではありません。森田和郎の将棋発売の3年前、個人向けコンピュータ(パソコン)の普及黎明期だった1982年に、エニックス(現スクウェア・エニックス)が開催した第1回ゲーム・ホビープログラムコンテスト森田のバトルフィールドを出品して最優秀プログラム賞を受賞。同じくコンテスト受賞者の中村光一さん(現(株)スパイク・チュンソフト代表取締役会長)らとともに出品作品を市販してベストセラーに育て、新時代の「名前で作品が売れる」スタープログラマーの先駆者となったのでした。

学生時代に(株)ランダムハウス(現(株)悠紀エンタープライズ)を設立し代表取締役社長に就任。森田オセロ・アルフォス・ミネルバトンサーガ・リグラス・サムライスピリッツ零…他多数のソフト開発のエピソードは、Togetterやインターネット検索等を利用して多数見ることができます。

一時代を築いたゲームプログラマーでしたが、森田和郎さんを一言で表すならやはり「森田将棋の森田さん」でした。世界コンピュータ将棋選手権には第1回〜第9回まで出場した後、冒頭の写真のようにその後も会場まで観戦に来ておられました。自身も将棋好きでアマチュア強豪、将棋の前にオセロを手がけたのもコンピュータ将棋の開発への準備という意味が強かったようです。飾らない人柄で、コンピュータ将棋協会例会やゲームプログラミングワークショップでも熱心に技術論を語っておられました。今年、コンピュータ将棋が初めて現役プロ棋士に対して勝利を収めた第2回電王戦を生前に見られなかったのは、残念というほかありません。

享年57歳の若さでした。心からお悔やみを申し上げます。

Leave a Comment

第2回電王戦の専門誌での評価

将棋世界 2013年 06月号 [雑誌]

今月初めに発売された、月刊将棋世界こちらは電子版6月号の「第2回電王戦全局レポート」にて、第2回電王戦の全5局の解説が掲載されています。例年、世界コンピュータ将棋選手権を将棋世界にて取り上げていただいていますが、今回はプロ棋士の対局ということもあってか、1局あたり2ページが費やされ、より詳細に対局の内容が掘り下げられているといえます。

各対局の詳細を見ていくと、第一局は相手の無理攻めを誘う阿部四段の作戦が成功し終始リードを保ち快勝、第二局は細かく形勢が揺れるもponanzaが終盤の競り合いを制し勝利。第三局は大きく形勢が揺れる波乱の展開の末ツツカナが逆転勝ち。第四局は大波乱の持将棋引き分け。そして第五局は…と、戦いの機微が密度濃く伝えられています。将棋専門誌ゆえ、勝敗の分かれ目となった指し手が詳しく解説されています。

第3回の開催が期待されているものの未定とされている電王戦。もし第3回が行われれば、その勝負の内容は今回の戦いに強く影響されたものになるでしょう。5局すべてに相異なるドラマがあった第2回電王戦を踏まえ、プロ棋士のコンピュータ対策はどのように進化するか、今回3勝1敗1分で勝ち越したコンピュータ将棋チームはコンピュータ対策をどう迎え撃つか…を想像するのには読んでおきたい特集といえます。「コンピュータ将棋がプロ棋士に勝った」と大きく報じられてすでに社会の想像力を刺激している第2回電王戦、本稿を読んだ将棋世界の読者は、すでにさまざまな想像を巡らせていることでしょう。

Comments (1)

« Newer Posts · Older Posts »